長崎で「家系学セミナー」開催-家系図で家族問題を分析

「世代間連鎖」について解説する小川さん

「世代間連鎖」について解説する小川さん

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 長崎経済新聞レンタルルーム(長崎市万屋町)で2月28日、家族史の観点から家系にまつわる問題を分析し解決の糸口を探す「家系学」セミナーが開かれ、女性を中心に12人が受講した。

用意されたレジュメの一部

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 講師の家系研究所主幹研究員・小川敬さんは21歳の時から家系譜製作会社に勤務。仕事を通じて家系と家族関係との間に相関構造があることを発見した。長年研究を重ねた末に「家系学」を学術的に体系化。家系研究所の設立に関わり研究活動を進めながら全国で研修や講演を行っている。

 今回の講義は入門編「家系学について」。小川さんはA4用紙6枚にまとめたレジュメを用意し、スライドでさらに詳しい内容を見せながら講義を進めた。「家系学で家族の範囲が完結するのは祖父母、両親、私の3世代。ここを分析すれば家系にまつわる多くの問題解決の糸口が見つかる」と話すと受講生らは熱心にメモを取った。「個人に感情があるように家系にもそれぞれ独自の感情がある。その感情を家系全体で無意識に共有してしまう。一人一人の人生にもそれが深く影響を及ぼし、本人がそのことで悩むケースは多い」という話に多くの受講生がうなずいた。

 小川さんはスライドを使って複雑な事情を抱えた「ある家族」の家系図を解説。全て解説した後に、それがある著名人の家系図であることを明かすと、「ああ、なるほど」「へえ、そうなんだ」という声が受講者らの口から漏れた。「家系図は目に見える形にすることで、今まで何となく感じるだけだった世代間や夫婦間の隠れた課題がはっきりと浮き彫りになる。その課題解決に向けて家族が会話を持つプロセスこそが一番大切なこと」と話す小川さん。実名を伏せて実際に解決に至った相談事例を紹介した。

 「夫は母子家庭で育った婚外子、妻は若い頃に実家を飛び出して以来の疎遠状態。夫婦ともにどちらの両親とも関わりを持ってこなかった。夫の母親が死亡した直後から夫が精神的に不安定になり、夫婦の次男が突然不登校に。何度か講義を受けていた妻は不登校の原因が夫にあると悩み、何度も夫に協力を求めるが受け入れられず離婚を決意した上で相談に来た。妻に家系図を見せながら夫と協力して解決することが大切だと話したところ、妻はしばらく悩んだ末に夫に協力を求めることを決意。意外なことに夫は素直に私の元を訪れた」と小川さん。

 説明を受けた夫は何かを感じ、突然その場で妻の実家に電話。妻の両親に遊びに行くことを伝え、後日訪れると豪華な食事で歓待された。妻の父親が子どもの頃の妻のアルバムを持ち出して目を細めながら夫に話しかける姿に接すると、夫は両親が妻に対して大きな愛情を今でも注いでいることを心から感じて肩が震えたという。その後、夫の提案で家族そろって妻の実家の墓参りをした時、妻の気持ちに大きな変化が起きた。「夫の父親はどんな人だろう?」。

 夫の父親はすでに亡くなっており、父親の顔さえ知らない夫は妻とともに父親の墓を調べて墓参へ。妻は墓前で亡き父親に対する感謝の手紙を読み上げ傍らの夫は号泣したという。その後、次男は何事もなかったかのように学校に通い始めた。

 小川さんは「家系学はあまりに奥が深く速習することはできないが、自分自身も虜(とりこ)になったように学べば学ぶほど面白い。講座の目的はあらゆる思想を超えて美しい家族文化を再構築することだが、学問の最終目的は自分自身の『自尊感情』をしっかり持つこと。自尊感情とは自分自身を心の底から大切に思える気持ち。『思う』のではなく『思える』気持ちが沸いてくることに重要な意味がある」と話す。「『自己評価』のように周りから左右されることなく、ゆるぎのない『自尊感情』を自分の中に持つことが結果的に家系の健全化につながる」と締めくくった。「余談だが家系学を学ぶ人は、関が原を境に東は圧倒的に男性、西は圧倒的に女性。原因は研究中」とも。

 島原から駆けつけた女性は「家族がどんどん分散し、その連鎖の原因が家系ではないかと思っていた。ネットで検索していたところに講演会の記事が目に飛び込んだ。当初考えていた以上に家系図が深い意味を持つことがよく分かった。ずっと続けて学びたい」と意気込む。唯一の男性受講者は「家系図に興味があった。最初は宗教の話かなと警戒したが完全に学問で面白かった。自分にも当てはまることが多く、また受講したい」と話す。

 主催したハッピーツリーの嘉悦郁子さんは「第1回にしては10人以上の受講者があり大成功。今まで受講した人のほとんどが再受講を望んでおり、今回も多くの人から同様の声を聞いた。これを機に長崎でも学ぶ人が増えればうれしい」と受講を呼び掛ける。

 次回は3月28日18時から同所で開催。問い合わせは嘉悦さん(TEL 090-3324-1698)まで。

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