長崎市立図書館(長崎市興善町)多目的ホールで現在、古写真展「1874年、激動の長崎」が開かれている。
今から140年前、1874(明治7)年当時の長崎を写真で振り返る同展。
同年の出来事としては、8月20日、風速60メートルの巨大台風が長崎を襲い、完成後間もない初代の長崎県庁が全壊したほか、出島や大浦海岸通り、飽の浦にあった長崎造船局、恵美須神社、諏訪神社の青銅製大鳥居なども甚大な被害を受けたという。
このほか、12月9日には金星が太陽の前を横切る現象が105年ぶりに起こり、観測地点に適していた長崎に米国とフランスから最新鋭の観測機器を装備した観測隊が来訪した。観測隊の目的は地球から太陽までの距離を算出する天文学的な観測作業だったが当時の日本人には理解不能であったため、研究者らは「科学の黒船」と呼んでいる。
古写真は4部構成でパネル展示。第1部は軍艦で長崎に寄港した米海軍大尉「R.E.カーモディ」の所蔵アルバムから長崎の各所で撮影した写真を展示しており、着実に変貌しつつある明治維新後の長崎が見られる。
第2部は同じアルバムから巨大台風の被害の前後を比較しながら展示。特に7月に完成したばかりの初代長崎県庁舎と、台風襲来後に全壊して瓦礫の山になった姿が来場者の目を引いていた。第3部は高島炭鉱の近代化のために招へいされたイギリス人鉱山技師「F.A.ポッター」のアルバムから台風被害を中心に展示している。第4部は金星観測のため来日した米仏両国の隊員たちが残した写真を中心に展示。米隊員が観測地に選んだ大平山は観測後、現在のように「星取山」と呼ばれるようになった。
観測機器の古写真を見た男性見学者は「とても鮮明に写っていて驚いた。昔の観測機器だから簡素なものだと思っていたが、今でも十分使えそうな質感が伝わり迫力に圧倒された」と話す。写真を提供した長崎大学付属図書館学術情報サービス班班長の下田研一さんは「当時、すでにレンズの技術が進んでおり、写真原板が大きかったことや空気が今より澄んでいたことが鮮明度の高さにつながっていると思う。ぜひ多くの人に見てほしい」と来場を呼び掛ける。会期中の土曜・日曜は11時から、同展に関連したトークイベントも行う。
開場時間は10時~18時。入場無料。火曜休館。9月15日まで。