長崎大学大学院工学研究科インフラ長寿命化センター(松田センター長、長崎市文教町)が「軍艦島」(端島)の3次元CG映像を完成させた。
同センターは2007(平成19)年1月に発足。主に道路などの交通インフラを維持管理するスペシャリスト「道守(みちもり)」を養成する事業などを行っている。
長崎県は観光資源が離島や半島部などに点在するため、それらを結ぶ道路や橋などの交通インフラ網が早くから整備されているが、海からの塩害によるインフラ構造物の環境劣化の進行が大きな課題である一方で県の財政状況は厳しく、建設事業費や維持管理費をいかに抑えるかも大きな課題。インフラ構造物の保全方法は欠陥を発見して修理する「事後保全」と、欠陥が起こらないように保全する「予防保全」に分けられるが、効果的な予防保全を実現するには普段からのきめ細かな対応が必要となり、それを担うのが道守の役割。同センターでは県と連携を図りながら、県内の自治体職員、建設・コンサルタント、NPO、地域住民などを「道守」として養成している。
松田浩センター長は8月19日、これまでに同センターが培ってきた計測技術を応用して軍艦島(端島)の3次元CG(コンピューター・グラフィック)映像を完成させたと発表した。松田教授によると、CG映像は今年2月に長崎市から委託された事業で「端島炭坑跡(軍艦島)の保存管理や整備活用に資する資料として活用」することが目的。無人飛行機を使った空撮を含む約2万8000枚の写真と、およそ145カ所でレーザー光線による計測を組み合わせて完成させたという。
松田教授は「実測に基づいた3次元CGなので、今後は画像を使ってコンクリートの劣化を調べたり、海水に浸食された深さや崩壊したコンクリートの体積も計算したりできる。この技術を応用することで大規模な歴史的構造物の劣化過程を正確に記録することも可能」と話す。
同センターではさまざまな情報を発信するために9月9日、フェイスブックページを立ち上げた。主に技術職員の出水享(あきら)さんと、先月末まで長崎市地域おこし協力隊員(池島担当)だった小島健一さんの2人が管理する。小島さんは「池島の活動をしていたころの縁がきっかけで研究員として迎えてもらった。とても素晴らしい活動をしているのに一般に知られていないのはあまりにもったいない。これから出水さんやセンターの皆さんと協力してどんどん情報を出していく。楽しみにしてほしい」と意気込む。無人飛行機を使った軍艦島の計測風景を撮影した動画なども同ページで見ることができる。
完成した軍艦島の3D映像は9月19日まで長崎市役所(桜町)1階ロビーのモニターで公開されている(土・日・祝日閉館)。