長崎の「葦船学校」が一般社団法人化-自生するアシで船作り

アシ船を漕(こ)ぐ子どもたち

アシ船を漕(こ)ぐ子どもたち

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 河原などに自生するアシを使ったワークショップ「葦船(あしぶね)学校」を展開する「カムナ葦船プロジェクト」が9月9日、一般社団法人「ONE OCEAN」を設立した。

アシを束ねる作業風景

 同プロジェクト代表で法人の代表理事を兼務する石川仁さんは1987(昭和62)年~1989年、アメリカ、南インド、ヨーロッパ、東アフリカで放浪の旅を体験。その後もサハラ砂漠で2700キロをラクダと歩いたり、アラスカ先住民のイヌイットと生活を共にしたり、ペルーで現地ガイドをしたりするなどさまざまな冒険に挑戦してきた。その中で葦船に出合い、今年1月に拠点を長崎に移して「葦船学校」のワークショップを全国で展開している。

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 石川さんは「以前は世界を渡り歩いて巨大な葦船での航海プロジェクトなどをヨーロッパの大手スポンサーに協力してもらいながら手掛けていた。長崎に移住してからはNPOなどの団体や学校を中心にしたワークショップに注力しており、やりがいも大きい。さまざまなメディアで取り上げてもらったおかげで依頼がかなり増えた。活動をさらに充実させていくために受け皿としての一般社団法人を設立した」と説明する。

 「現代はスマートフォンを持ち歩き、すさまじい速度でテクノロジーが生活に入り込む時代だからこそ、自然というテーマが渇望されるのかもしれない。当たり前だがアシ船はいずれ腐る。しかし多くの子どもは腐るものに触れる機会が少なくなっている。全国どこでも手に入るアシを使って自然界の不思議を学び、太古から伝わる人間の英知に触れ、力を合わせることを自然に体得し、最後は自然に感謝する心が芽生える。子どもたちは『腐ることは自然で素晴らしい』ということを知る。たった数時間で船ができるので、大人も子どもも夢中になる」とも。

 長崎県内では諫早市や長崎市高島町、五島や壱岐などで「葦船学校」のワークショップを開いてきた。「アシ船作りは誰もがほぼ初めて。不器用なお父さんに器用な子どもが教える姿も珍しくない。学校行事の場合には校長先生に生徒が教えている場面もあった。3世代で参加した人は、昔取ったきねづかとばかりに、おじいさんが一番張り切ったりする。勉強が得意じゃない子をリーダーに任命したら、がぜん実力を発揮したりする。単なるアシの束がだんだん船に見えてくる瞬間が、一緒のチームでも人それぞれ違って見えているのも面白い。おおげさかもしれないが、アシ船作りはどんな人の魂も揺さぶる力がある」と石川さん。進水した後のアシ船は、ぬれた部分が重くなり、乾いた部分は軽いままなのでバランスが安定し、転覆することはほとんどないという。

 法人の名称は「海は一つ」という思いに由来する。「恐らく古代人は世界中でそれぞれアシ船のようなものを発明して海を渡ったようだ。渡った土地でアシ船が腐って定住した人もいるだろう。その子孫がもしかしたら自分たちかもしれないと思うと壮大なロマンを感じる。それを媒介した海はどこまでもつながっている」と言葉を添える。

 いずれはアシ船の素材を使ったアートコンテストを開きたいと夢見る石川さん。「自分のアイデアではアシ船の上にかなり本格的なアシの茶室を作って浮かべたい。真っ青な海を眺めながら海上でいただく一杯のお茶は格別かも」とニンマリ。

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