長崎歴史文化博物館で特別展「医は仁術」-解体新書からヒトiPS細胞まで

解体新書(国立科学博物館蔵)

解体新書(国立科学博物館蔵)

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 長崎歴史文化博物館(長崎市立山1、TEL 095-818-8366)で現在、特別展「医は仁術」が開催されている。

音声ガイドシート

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 長崎大学と同館との包括連携協定締結を記念して企画され、長崎大学医学部と長崎大学付属図書館が共催する同展。入り口で音声ガイド機(有料=520円)を借りると、23カ所のポイントでテレビドラマ「JIN」の主人公・南方仁を演じた大沢たかおさんの解説を聞く事ができる。

 展示内容は書籍のように全体を「5章」に区分けして構成。第1章のテーマは「病はいつの時代も身分の貴賤(きせん)なく人々を襲う」。医学の知識や技術が未発達な時代、人々は病を恐れて神や自然に祈る以外に方法がなかった。当時の人々が病をどのように恐れていたかがよく分かる資料に並んで、江戸幕府が開設した小石川養生所を紹介する。

 同所開設のきっかけは1722年1月に町医師・小川笙船(赤ひげ先生としてドラマや映画化された人物)が、貧しさを理由に医療を受けられない人たちのために将軍への訴願を目的に設置されていた目安箱へ投書したこと。投書を読んだ8代将軍・徳川吉宗は江戸町奉行・大岡忠相に検討を命じ、享保の改革の一つとして同年12月に小石川薬園(現在の小石川植物園)内に貧民専用の無料医療施設として開設した。小川笙船は担当医の一人に任命され、同所は幕末まで運営された。明治維新後、施設は東京帝国大学に払い下げられ、現在も東京大学内に保存されている。

 第2章は「医術の伝来」がテーマ。「重訂解体新書」で大槻玄沢が紹介して蘭(らん)学者の間で流行したのは、紀元前の古代ギリシャで実証的な医療を行った医師・ヒポクラテス。資料からは洋の東西から伝わった医術が日本独自の発展を遂げていく歴史が分かる。ヒポクラテスの肖像を描いた掛け軸や、「解体新書」(1774年)、その原書となる「ターヘル・アナトミア」(1734年)や杉田玄白が大槻玄沢に改訂を依頼し、玄沢が36年の歳月をかけて改訂した「重訂解体新書」(1826年)などと並んで、当時の薬や包装紙、薬箱、薬屋の看板、国産のエレキテルなどの実物を展示する。

 「和魂漢才、和魂洋才の医」をテーマとする第3章では、精巧に作られた医療機器や綿密に記録された当時の資料などを中心に展示。当時、日本には遺体を傷つけてはならないという思想から解剖技術が遅れていたが、医療技術発展のために罪人の斬首体を解剖することが許可され、医師らが緻密に描写した資料が展示されている。1820年に大阪の医師・奥田万里が作らせた「奥田木骨」(木製の骨格標本)の精巧さや、外科医・華岡清洲が60代の女性に対して施した世界初の全身麻酔による乳がん摘出手術(1804年)の記録などが目を引く。

 第4章は「近代医学と仁」。幕末に来日したポンペは長崎に医学伝習所、小島養生所(現在の長崎大学医学部の源流)を設立。西洋科学から医学全般を網羅する医学教育の基礎を確立した。その後、ボードイン、マンスフェルトなどによる医学教育から松本良順、長与専斎など日本の近代医学の先人が輩出された。

 最後の第5章では身体の仕組みが分かる映像や3Dプリンターによる臓器モデルなど、人体の構造を紹介する「現代の医」がテーマ。ヒトiPS細胞の実物(固定標本)を顕微鏡で見ることができる。3Dプリンターで製作した健康な臓器と疾患モデルを比較展示。実際に触って体感できる臓器模型として「脳」「肝臓」「心臓」を用意。全ての展示を見学した後は、鉄拳さんのオリジナルパラパラ漫画「受け継がれる仁」が鑑賞できる。

 見学を終えた長崎市在住の30代の女性は「正直、血を見るのが苦手なので少し怖かったが、あまりの迫力に思わず長時間見入ってしまった。最後の鉄拳シアターでは何度も泣いたが、最後は心が温かくなった。大人以上に子どもたちにとって大きな価値があるイベント。ママ友にもぜひ勧めたい」と話す。

 関連イベントとして1月20日14時から、NBCビデオホール(長崎市上町、同館から約450メートル)で精神科医・香山リカさんが講演「ココロの病、いま昔-変わったこと、変わらないこと」を行う。定員300人。入場料は2,500円(同展の入場もできる)。

 開場時間は10時~18時(最終入場は17時30分)。入場料は、大人=1,200円、高校生・大学生=1,000円、小・中学生=500円。2月11日まで(1月20日は休館)。

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