長崎市立図書館で「天才ちゃんの育て方」講習会-学習塾経営者がノウハウ公開

講義中の白石直子さん

講義中の白石直子さん

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 長崎市立図書館本館(長崎市興善町)で1月29日、「天才ちゃんの育て方」講習会が開かれた。

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 講師は発達障がいや不登校の子どもなどを指導する個別学習塾「凸凹楽習塾・勉強ラボ」(虹ケ丘町)塾長の白石直子さん。講習会には歯科医、心理カウンセラー、保険外交員など10人ほどの男女が参加した。

 およそ15年間、塾講師や家庭教師として小中学生を中心に指導してきた白石さんは結婚を機に退職したが、生まれてきた男児が発達障がいを持っていることがわかった。学力が高い子どもから勉強が苦手な子どもまで、子どもの能力に合わせて幅広い指導実績を持つ白石さんだが自分の子育てでは暗中模索、苦労の連続だった。

 息子の発達障がいを理解するために必死で勉強した白石さんの人生は、「多重知能理論」(MI理論)に出合ったことで大きく変わることになる。ハーバード大学のハワード・ガードナー教授(心理学)が1983年に提唱した同理論は「人の知能は紙と鉛筆だけでは測定できない。みんなが多重知性を持っており、少なくとも8つほどの知的活動の特定分野において才能を大いに伸ばせる」と説く。

 同理論を基礎に息子を指導する過程で確信を得た白石さんは2013年8月、息子と同じ思いをしている子どもや保護者のために同塾を開設。現在、小中高生22人が在籍する。ユニークな指導法の評判は口コミで広がり、昨年は複数のメディアで取り上げられた。

 前半のテーマ「子どもの才能を見つけよう」と題したレジュメを配布した白石さんは冒頭、「天才とは得意なことを生かした『仕事』を通じて才能を発揮できる人。そのことで自分が幸せになると同時に、他人を幸せな気持ちにできる人。それが社会貢献につながる人」と、天才について定義。天才をイメージする人物の事例として、タレントで教育者の「さかなクン」を紹介した。さかなクンは魚に関する豊富な知識を生かして講演や著作活動などを幅広く行っており、2006年には東京海洋大学客員准教授に就任。東京水産大学の受験に失敗した高校時代の苦い経験は、小学校の卒業文集に記した「水産大学の先生になる」という夢を実現することで実を結んだ。

 才能を見つけるヒントとして「MI理論」に登場する8分野を提示。「得意なこと、情熱を持てることが才能につながる」と説明した白石さんは「才能が生かせなかった事例」として自身の職業体験を振り返った。「一時期、法律事務所の職員として勤務したことがある。債務整理の仕事で金額を間違えたことが何度かあるが、最悪のケースでは50円と5万円を間違えた。弁護士や交渉相手に呆れられた結果、『これは私がやる仕事ではない』と心底わかった」と白石さん。会場はどっと笑いに包まれ、多くの参加者が「わかる、わかる」とうなずいた。「やはり私には人を教える仕事が向いている」と塾講師に復帰すると、「水を得た魚」のように多くの子どもたちの才能を伸ばすことができたという。

 後半のテーマは「見つかった才能をどう伸ばすか」。白石さんは「暗示の力を利用するのもテクニックの一つ」と話し、「やる気を起こさせる声かけに変換すればよい」と説く。「勉強しなさいと言うのではなく、『今から勉強するところなんだね』『偉いね』などとプラスの言葉に変換することで子どもの心にやる気が起こる」と説明し、参加者らに課題を与えた。

 「何度言ったらわかるの?」「どうして勉強しないの?」「もっと頑張りなさい」など、8つの言葉を課題に「やる気を起こさせる声掛け」に変換することを求められた参加者ら。「もう1回言おうか」「今から勉強するところだよね」「頑張ったら、おやつが待っているよ」。指名された人が回答するたびに参加者らは熱心にメモを取っていた。

 「正解はない。声掛けの内容が事実と異なっていても大丈夫。壊れたレコードのように何度も何度もやる気を起こす言葉に変換して声を掛け続けると、子どもは少しずつ自信を持つようになる。やる気が少しずつ出てきて、中には見違えるように変化する子もいる」と自信を見せる。終了後の参加者アンケートには「暗示を掛け続けるという方法を早速試したい」「変換声掛けを今から使いこなしたい」「これならすぐにできそう」と前向きな感想が並んだ。

 「子どもを信じてプラスの言葉を掛け続けることは親にしかできない。わかりやすくするために暗示という表現を使ったが、実際はプラスの言葉を常に入力するというニュアンスに近い。多くの母親は子どもをついつい叱り飛ばしてしまうので自己嫌悪に陥りやすい。しかし、母親であれば仕方ないことであり、私も実は同じ。1回叱ったとしても10回肯定してほめてあげれば十分取り戻せる。叱ったことを深く悩まず、すぐに肯定してプラスに変換するテクニックを学んでほしい」と白石さん。「50円と5万円を間違えたエピソードは教え子たちにも人気がある。先生にもできないことが自分にはできるという強い自信が子どもの心に芽生えるようだ」とも。

 次回開催予定は2月26日。

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