
次世代のキーマンが2045年の長崎を構想する「FG長崎2045シンポジウム」が3月15日、樂ギャラリー(長崎市浜町)で開催された。
同シンポジウムを主催する「FG長崎2045」は、未来の長崎都市圏の都市デザインについて、被爆から100年を迎える2045年を一つの到達点として設定し、コミュニティーデザインや都市景観、観光などの専門分野で活躍する次の世代(Future Generation)のキーマンが意見交換などを行う会議体として2020年5月に設立。斜面地に増えている空き家問題の解決に取り組む「つくるのわデザイン」代表の岩本諭さんをチェアマンに20人ほどが定期的に集まり、毎年シンポジウムを開催してきた。
当日はオンライン参加も合わせて30人ほどが集まったシンポジウムでは、岩本さんと観光分野からサブチェアマンの坂井桂馬さん、IT分野から山口知宏さんがパネリストとして登壇。本年度は「長崎市中心部の再生」をテーマに活動を続けてきたことから、まず平成から令和までの中心部のまちづくりを評価。商業分野では外部資本の大型商業施設の開業で利便性が向上したものの、都心部の商業機能の分散化やインバウンド消費への対応の遅れが目立つことから、既存商店街のビジネスモデルの転換やインバウンド消費の取り込みなど課題が残るとした。産業分野ではオフィスビルの建設によるバックオフィス誘致やスタートアップ支援への評価があったものの、造船に代わる新たな主要産業の育成ができていないという課題があるとした。このほか、交通や暮らし、文化、観光など6つの分野ごとにまとめた。
シンポジウムでは、2045年に向けた長崎市の動きを踏まえ、「平和都市としての長崎市中心部」を提案。「平和都市長崎9の街ビジョン」として「8月9日を考える街」「〇〇をほっとかない街」「チャレンジとエールの街」などを提唱したうえでビジョンに伴走し、平和な社会を実現に向けて行動する「ピースメーカー」の存在がまちづくりのキーマンになるとした。
長崎市では人口の転出超過や造船業の衰退などの課題とさまざまな変化があり、2045年が時代の転換点となると捉え、ソフト面とハード面からこれからの20年を構想。ソフト面では「テクノロジーで最適化したつながりで突破するコミュニティー」をテーマに持続可能な地域コミュニティ―を、ハード面では長崎市中心部と浦上エリアを双子都心として歴史・文化の保存による経済循環の創出などの必要性を、それぞれ提案した。
ディスカッションでは参加者から、「『平和』の見せ方を広げ、長崎らしく『和華蘭』『多文化』など楽しく伝えていけるといい」「長崎出身の県外技術者がテクノロジーの力で地元に貢献できればコミュニティーにも変化が生まれるのでは」などの声も上がった。
「平和をテーマに長崎市中心部のまちづくりを考察したが、平和を広く捉えることがとても大切という共通認識になったのでは」と話す岩本さん。「プランを公開することで多くの人を巻き込んでブラッシュアップしていければ」と意気込む。