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コーヒー伝来の地、長崎・出島で「コーヒーの日」に聞く ~こだわりのコーヒーを求めて~前編~

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 101日に「国際コーヒーの日」を迎えることから、長年バリスタとして活躍しながら、日本のコーヒー伝来の地「長崎・出島」でこだわりのスペシャルティコーヒーを提供する「Attic coffee and dining」(長崎市出島町)社長・野田信治さんに話を聞きました。

—今年も「国際コーヒーの日」を迎えますが、どんな日なのでしょうか?

「国際コーヒーの日」は2001年から行われている取り組みで、元々はカフェを営む人たちが自主的に「コーヒーの日を作ろう」と呼び掛け、制定につながったものです。

Atticさんでもこの日に10年ほどイベントを続けてきたそうですね。

はい、10年ほど前は今ほどコーヒーというものが広まっていなかったことから、普及活動の一環として当店でも行ってきました。

—そもそもコーヒーの歴史はどのくらいあるのですか?

コーヒー発祥における伝説は6世紀のエチオピアを舞台にした「ヤギ飼いカルディの話」や13世紀のイエメンを舞台にした「僧侶シェーク・オマールの話」などが残されており、人類の祖先ホモ・サピエンスが住んでいたといわれるエチオピアで野生のコーヒーの木が見つかっていることなどからもエチオピアが起源という見方が有力とされています。

—そんなに古くからあるのですね。その頃から広く飲まれていたのでしょうか?

人々に飲まれ始めたのは10世紀初頭からといわれ、当初はアラビア諸国で薬の一種として扱われていました。14世紀中頃には世界最古のコーヒー店「カーネス」が当時のコンスタンチノープルに作られています。そして、トルコを経てヨーロッパへと伝わります。

—日本でコーヒーと言えばヨーロッパの飲み物というイメージがありますよね

15世紀初頭のベネチアを皮切りに、ヨーロッパ全土へと広まったコーヒーは大航海時代を迎え、船に乗って江戸時代の長崎・出島へと伝来したといわれています。コーヒーが日本にもたらされた伝来の地・長崎だからこそ、コーヒーの日にイベントをする意味があると思うのです。

—コーヒー伝来の地が長崎だと知るきっかけがあったのでしょうか?

コーヒーを仕事にしてから「良い所でコーヒーの仕事をしてるね」と言われるようになりました。なぜなのか気になって調べていくと長崎の出島がコーヒー伝来の地だということに行き着きました。会社の所在地が「出島町1-1」だったので、そのとき言われている意味がようやく分かりました。(笑)

—手探りで行き着いたのですね

当時はコーヒーのことを教えてくれる人は近くにいなかったので、とにかく学ばなければという思いで講習会やセミナーなどに行っていました。

—長崎にまつわる偉人とコーヒーのストーリーもあるとか?

江戸時代に日本を訪れていたドイツ人医師・シーボルトが東長崎で立ち寄ったという場所で渡したといわれているコーヒーカップがあると聞きつけ、見に行ったこともありました。

—日本でもコーヒーにまつわる話がいろいろと出てきそうですね

当時の日本ではコーヒーになじみが無く、あまり好まれなかったそうです。歴史をひもといていくと、大田蜀山人が船の上でコーヒーを飲み、体験記として残されていることなどさまざまなことが分かりました。シーボルトは手記の中で「200年もの歴史があるコーヒーをなぜ日本人は飲まないのか?」とも記していたそうです。

—日本ではいつ頃からコーヒーが広まったのですか?

出島でコーヒーが本格的に広まったのは1900年代に入ってからのことです。シーボルトが出島に造った鳴滝塾で門下生に振る舞ったといわれています。出島からコーヒーが広まったという歴史は長崎歴史文化博物館にも記録があり、見ることができます。

—野田さんとコーヒーとの出会いについても教えて下さい。

子どもの頃、夏休みと冬休みに父と一緒にモーニングに行っていました。父は喫茶店でしかコーヒーを口にしない人で、当時の僕はカフェオーレなどを飲んでいた記憶があります。その時からコーヒーは身近で生活の中にある存在だったのだと思います。

—そんなコーヒーに魅了されたのはなぜですか?

18歳くらいのころ、福岡のある喫茶店で飲んだコーヒーがありました。口にした瞬間、体に電気が走ったんです。あのときのことは今でも鮮明に覚えていて…とても衝撃を受けました。これまで自分の中にあったコーヒーの常識を覆された感じがしました。それから、長崎にも同じコーヒー豆を使っている喫茶店があることを知り、コーヒーのことをもっと知りたいと思ったんです。完全にコーヒーに魅了された瞬間でした。それ以来、心のなかでいつかコーヒーをやりたいと思っていたのだと思います。

—以前はコーヒーを飲む場所=喫茶店というイメージが強かったですよね?

昔は喫茶店にコーヒーを飲みに行くという方が多く、タバコとセットだったり、バーみたいな感覚で行くイメージがあったのではないでしょうか?そこから打ち合わせや休憩の場として一般の方が喫茶店でコーヒーを楽しむ文化が広がっていったのではないかと感じます。時代が流れやがて「カフェ」という形でコーヒーは人々のライフスタイルの中にもっと身近なものとして浸透していきましたよね。

—そう言われると今は「喫茶店」ではなく「カフェ」という店が多い気がします。Atticさんもカフェとして営業されていますね。

竜馬カプチーノなど、長崎にゆかりのある偉人をモチーフにしたユニークなラテアートなどでも知られるAttic。後編では店の誕生秘話に迫ります。

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