県立長崎図書館で「本間ちひろ原画展」 

「ピッピちゃん、こんにちは」(今年4月刊)を手にする本間ちひろさん

「ピッピちゃん、こんにちは」(今年4月刊)を手にする本間ちひろさん

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 県立長崎図書館(長崎市立山1)で現在、絵本作家・本間ちひろさんの原画展が開かれている。

 本間さんは1978(昭和53)年、神奈川県生まれの詩人・絵本作家・イラストレーター。小学4年生から高校卒業まで長崎県諫早市で過ごし、大学時代から児童文学の研究や創作を始めた。東京学芸大学大学院修了。2004年、詩画集「いいねこだった」で日本児童文学者協会新人賞受賞。作品に「金魚のでんわ」(2001年)、絵本「ねこくん こんやはなにたべる?」(2004年)、「おむすびにんじゃの おむすびぽん」(2014年)などがある。

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 本間さんは5月23日、同館講堂で開催された講演会に登壇。「涙のインクから、やさしさのカタチへ」と題し、主に絵本作りを通して自身が学んだことなどについて語った。

 講演の冒頭「女性の子育ては立派な社会進出」と本間さん。自身には子どもがいないため「社会の未来を担う子どもを育てることは立派な社会進出であり社会貢献。自信を持ってほしい」と自分の思いを訴えた。

 小学4年生の時に諫早市立真崎小学校に転校した本間さんは、市立真城中学校、県立西陵高校(諫早市多良見町)と進学。高台にある高校の窓から眼下に広がる大村湾を毎日眺めるのが楽しみだったという。「のどかな高校生活を送っていたある日、高校の図書館で絵本の原画を見たことがこの世界に入ったきっかけ」とほほ笑む本間さんは、「世の中には、こんな絵を描く仕事があるんだ。やってみたい」と素直に感じて東京学芸大学に進学。児童文学の道を志した。

 児童文学の童謡研究を進める中で20歳の時に書いた詩「なめくじはいいね」(2001年「金魚のでんわ」に掲載)を認められたことが最初の出版につながった。「ずっと褒められるのがうれしくて続けてきた。短い詩なので余白になめくじの絵を描いた。それがよかったようだ」。教授に絵本の出版社を紹介されたことが縁となり、児童文学界の知人が増えていった。

 学芸大の学生でありながら、早稲田大学で講師をしていた児童文学作家・北川幸比古さんの講義を受講。本間さんの熱意に触れた北川さんから「勉強になるから授業のアシスタントとしてアルバイトしないか」と提案され、早稲田大学のティーチングアシスタントを務めながら、さまざまな専門家と交流を持つようになる。ある日、北川さんが料理研究家の土井善晴さんと会うことを知り、「土井さんの大ファン」という本間さんは同行を願い出た。コーヒーを飲みながら土井さんに夢を語ったことがきっかけとなり、本間さんは数年後、土井さんと共著で本を出すことになる。

 福島が舞台となる絵本の仕事で、「モリアオガエル」の取材を通じて地元の人たちと触れ合った話になると本間さんは、「親切にしてくれた多くの人たちが震災後、とても大変だった」と声を詰まらせた。震災直後、本間さんは大学生や社会人と協力し合って被災地の要望を聞きながら、絵本や朗読音源などを避難所や学校、コミュニティーラジオ局などに送る活動を行った。「宮城県の小学校からの『辞書がなくて子どもたちが調べものができない』という声を受け、大手出版社が大量の辞書を無償提供してくれた。いろいろなところで人びとの温かさに触れた」など、目を潤ませながら話した。

 「大きな団体が動き始めるまで1年間活動を続けたが、この体験が私の気持ちを大きく変えた」と本間さん。「以前はかっこいい、洗練された絵を描きたいと思っていた。それが、心から優しい絵を描きたいと思うようになった。今では『この絵を見る人が優しく、柔らかな気持ちになってもらえれば』と思いながら描いている」とも。「これまで話したように行き当たりばったりの人生だが、その先に今の私がある。少しでも参考になれば」と締めくくった。

 原画展では「おむすびにんじゃの おいしいごはん」の原画を中心に展示する。開館時間は9時30分~20時(土日・祝日は17時まで)。6月21日まで(月曜および5月31日休館)。

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