8月10日に出版された「地獄の底は頭の上」を献上する奉納式が8月29日、軍艦島デジタルミュージアム(長崎市松が枝町)内にある端島神社で執り行われた。
同作は、ユネスコ世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つで軍艦島近くにある旧高島炭鉱(長崎市高島町)に勤務していた元鉱員・岩﨑健典さんの体験をつづったノンフィクション。岩﨑さんの長女で、ふんどし専門店「TeRAYA」(大浦町)の店主・かのこゆりさんに1年前から語ったものを書籍化したという。
奉納式は、神社の方式に従い、二礼二拍手一礼で始まった。その後、岩崎さんが本を献上、軍艦島デジタルミュージアムの久遠龍史社長が祝詞を読み上げ、二礼二拍手一礼で終了した。
その後、本の出版記念会見に応じた岩崎さん。記者会見は娘のかのこさんが仕掛けたサプライズだったという。かのこさんは「父が会場に入って小声で『これどうなっているの?』と困っていた」と、ほほ笑みながら裏話を明かす。
出版した本について、岩崎さんは「特別誰かに読んでほしいなどはない。ただ、頑固な自分が真面目に一生懸命頑張った人生(についてつづった同書)を読み、感じてもらえればそれでいいと思う。出し尽くした」と話す。
かのこさんは「子どもの頃から父は大変な仕事をしているということは知っていたが、本を製作する際、今まで聞かなかった話を知ることができた。生きているうちに聞けてよかった。本の後書きの日付は5月12日で、初版は7月15日だが、5月は母の命日、7月は結婚記念日。家族4人、犬たちと、家族総出演の話になった」と話す。
岩崎さんは「生まれて史上最大の花束をもらって、汗をかいた。参った参った、もうお昼寝の時間だ」と話し会場を後にした。
ミュージアムには岩崎さんが寄贈したつるはしや作業靴、50キロを超える巨大な石炭など約10点が展示されているほか、岩崎さんが軍艦島に上陸した際のインタビュー映像を見ることができる。
新書版サイズ、96ページ。価格は999円(データ本は777円)。インターネット書店「テラヤ書房」で販売するほか、9月1日からTeRAYA、軍艦島デジタルミュージアムなどで取り扱う。