琴海戸根町にある認可こども園「中央こども園」の庭に3月3日、1機の旅客機が突如現れ園児や地域住民の目を楽しませている。
同機体は隣接する長浦町の空き地に展示してあったものを同園が引き取り運び込んだもの。イギリスの航空機メーカーデ・ハビラント社(買収され、現在は加・ボンバルディア社)が1957年に製造した双発レシプロ小型旅客機DH-104 Dove(鳩の意味)で、戦後日本初の定期航路として旅客輸送や貨物輸送に活躍した機体の1機。現在では、塩原ファミリー牧場(栃木県那須塩原市)に屋外展示されているほか、航空マニアの間では世界で5機しか現存が確認されていない「幻の飛行機」で貴重な機体としても知られている。
同機体はJA5038として登録され、1968(昭和43)年まで国内の航空会社3社によって運用されたあと、旧長崎水族館で展示されていたが、1998年に水族館の閉園に伴い長浦町の農家・西浦源蔵さんが購入して展示していた。西浦さんは5年ほど前に亡くなっているが、生前「死んだら三途の川を飛行機で渡る」と話していたという。その後、息子の西浦一馬さんが管理していた。
同園は園舎の老朽化に伴い新たな園舎を昨年建設したばかり。現在古い園舎を解体し、園庭の拡大に伴って子供たちにメッセージ性の強い展示物の設置を検討していたという。
渡辺力園長は「本物の飛行機を展示する幼稚園は日本でもここだけでは。子供たちに本物の飛行機を身近に感じてもらえればうれしい。戦後の復興期を支えた産業遺産とも言える機体を大事に残したいという思いと同時に、当園を巣立っていった子供たちが世界に羽ばたいていってくれれば」と話す。
機体は経年による損傷が激しく、後部ドアが1枚欠損しているが、渡辺園長は「4月に新入生が入園するまでに外観を補修して展示できる状態にしたい」と話し、将来的には機内も復元することを検討しているという。機内の復元には多額の費用がかかる見込みで、現在復元への道筋を模索している。