書籍「ペコロスの母に会いに行く」著者の「ペコロスおかの」さんを招く交流会「岡野雄一さんと語らう会」が11月22日、書店「Book with Sofa Butterfly Effect(ブック ウィズ ソファー バタフライ エフェクト)」(長崎市大浦町)で行われる。
岡野さんは40歳の時Uターンし、現在は長崎を拠点に活動するフリー漫画家。雑誌編集に携わっていたことから、バブル崩壊後に寂れていく長崎の夜の街・銅座を活気づけたいと新たな雑誌制作を企画していた地元出版社からの声掛けで編集の仕事に携わる傍ら、ペコロスシリーズの執筆活動を始めた。
認知症になった母・光江さんとの日常のやり取りをユーモラスに描く同シリーズ。光江さんは熊本県天草市生まれ。貧困にあえぎながら、2人の息子を育て上げ、2000(平成12)年に亡くなった夫の悟さんは生前、繊細ゆえにアルコール依存症だったが別れず添い遂げた。その後認知症を発症し2006(平成18)年からは市内のグループホームに入所し、2014(平成26)年に老衰で死去している。
漫画は、当初携わっていたタウン誌の編集後記として公開していたが次第に話題となり、2009(平成21)年に自費出版していた。2012(平成24)年1月、東日本大震災にショックを受けていた岡野さんを励まそうと出版に協力していたカフェ豆ちゃん(東古川町)の店主が声を掛け、2冊目の自費出版作品「ペコロスの母に会いに行く」を刊行した。同作はSNSで話題となり短期間で重版が決定。その後もSNSを通じて応援の声が届き、映画化の話が舞い込んだ。2014(平成26)年に森崎東監督がメガホンを執って完成した映画「ペコロスの母に会いに行く」が公開された。岡野さんはその後も新作を発表し、ペコロスシリーズは計9作品が刊行されている。
書店店主の古屋桂子さんは岡野さんが地元タウン誌に携わっている頃から親交があり、取材を受けたことがきっかけで雑誌へのエッセー連載を行っていた。古屋さんが4月に書店をオープンしたことから岡野さんに声掛けし、イベント開催が決まった。
ペコロスシリーズについて、岡野さんは「介護エッセーコミックの草分け的存在として語られることが多いが、本当は生まれ育った家庭を描いているだけ。母が認知症を発症した時は『認知症』という言葉はなかった。共感してもらえるのは老老介護などの問題を抱える同じ団塊世代が多くいるからでは」と話す。
古屋さんは「この作品は介護世代の心に寄り添ったものではない。古典にもなりうる文学作品と感じる。誰でも生きていれば間違い、傷を負い、悲しみを得る。作中で随所に出てくるそういったものを、『すべて、あなただけの当たりくじだよ』と肩をたたいてくれる『人生に寄り添う作品』ではないか」と話す。「岡野さんの希望もあって車座になって話す『語らう会』とした。講演会やトークショーではなく、同じ目線で話をすることで作品や岡野さんの魅力を感じてもらえれば」とも。
開催時間は18時~19時30分。参加費1,000円。申込みは「Book with Sofa Butterfly Effect」(TEL 080-5189-0191)まで。終了後は20時からラウンジNana(寄合町)で岡野さんによる「ライブ&サイン会」を行う。