長崎市内で「ビール電車」「おでん電車」として親しまれていた路面電車が2月21日、イベント電車「シティークルーズあかり」にリニューアルして初の運行が始まった。
使われている車両は1950(昭和25)年製のもの。1993(平成5)年に車窓を眺めながら食事を楽しめるカウンター席を備えたイベント電車に改造され、夏季に走るビアホールとして楽しめる「ビール電車」として運行していた。おでん電車としての運行は今回が5回目となる。
長崎電気軌道が2年ほど前から車両のリニューアルを検討していたところ、一昨年9月に75周年を迎えた長崎船舶装備(長崎市西琴平町)が地域貢献事業の一環として無償で引き受け、シティークルーズトレインとして生まれ変わった。
豪華客船の内装などを手掛けた同社の経験を生かし、「ナガサキの色・光、あかり」をコンセプトに内外装を一新。建造から70年たつ車両の歴史を生かしながら船を連想させるデザインに仕上げた。深紅と紺の配色にいかりのマークをあしらった外装の車内は、暖色系の照明で木のぬくもりを生かした空間が広がる。
長崎にある世界遺産・大浦天主堂のステンドグラスパターンをオマージュした天井照明とスタンドライトをあしらい、シートにもモザイク調のパターンを取り入れた。華やかな装飾に彩られた車内は20人乗り。ボックス2人席4席、ボックス4人席2席にカウンター4人席に食事やドリンクを提供するサービスカンターを備える。
長崎を走るもう一つのコンセプト車両「みなと」との対比も考慮してデザインした。これまで夜間のイベント電車として親しまれてきたが、陽光あふれる長崎で新たな活躍の場を広げてほしいと、「~あけのほし・よいのほし~あかり」の別名も。
おでん電車は日曜・祝日を除く3月28日まで、1日1便、1人4,000円の完全予約制で運行。19時に崇福寺を出発して浦上車庫を経由し、20時30分に同電停着となる。2月5日に発売されたチケットは、わずか20分で完売した。
長崎電気軌道広告事業部の徳渕公彦さんは「リニューアルしたばかりで調整に追われる中、ようやくおでん電車として運行をスタートできた。初日のお客さまからも好評で手応えを感じている」と笑顔を見せ、「夏季にはビール電車としての運行も予定している。企業やグループ向けの貸し切りプランなども検討していきたい」と意気込む。