三菱重工長崎造船の立神ドックで3月3日、海上自衛隊による新型護衛艦「もがみ」の進水式が行われた。
防衛省海上幕僚監部広報室によると、艦名は山形県を流れる「最上川」に由来。「もがみ」の艦名は旧海軍時代に長崎で建造された通報艦「最上」、最上型重巡洋艦「最上」、海上自衛隊に改変後のいすず型護衛艦の2番艦「もがみ」に続き4代目。昨年11月に三井E&S造船の玉野艦船工場(岡山県玉野市)で進水した同型2番艦「くまの」と同じ新型3900トン型護衛艦(FFM)の1番艦として建造されたことから、ネームシップとして今後建造される同型艦は「もがみ型護衛艦」という新たな艦種として扱われる。本来は「くまの」と同時期に進水を行う予定だったが、エンジントラブルで建造が遅れたことから後ろ倒しになっていた。
満潮時刻となる10時45分、港に大きな汽笛を響き渡らせゆっくりと進水を始めた「もがみ」が無事長崎港に浮かぶと、見物に訪れていた観衆から歓声が上がった。すぐに数隻のタグボートからロープがかけられ、こんごう型護衛艦「ちょうかい」が停泊するバース横のドックへと曳航された。
もがみ型護衛艦は多様な任務への対応能力を向上。平時は警戒監視活動を中心に、有事の際は対潜戦、対空戦、対水上戦だけでなく対機雷戦機能も備えることから海外派遣任務も期待されている。低視認性を重視した外観とし、魚雷発射管やミサイルなど従来は甲板などに設置し、レーダーに探知されやすくなる構造物を艦内に格納。対艦ミサイルなどに探知されにくくするためのステルス性の高い形状を特徴とすることから「ステルス護衛艦」とも呼ばれる。
基準排水量は3900トン、全長133メートル、全幅16.3メートルとコンパクト化した船体にガスタービンエンジンと1基とディーゼルエンジン2基を搭載し、出力は7万馬力。62口径5インチ砲1基、近接防空用艦対空ミサイル、艦対艦ミサイル、対潜・対機雷戦システムなどを主要兵装とし、通常型の汎用護衛艦の半分程度となる90人で運用可能。建造費も通常型の3分の2程度にとどめた。
防衛省は2018(平成30)年12月に閣議決定された、2019年度~2023年度の「中期防衛力整備計画」に基づき、10隻の3900トン型FFMを建造。将来的には22隻の建造を予定する。