稲佐山中腹にある紅葉谷(長崎市淵町)に建設中の紅葉谷砂防ダムで12月4日、子どもたちに土木の仕事を知ってもらうイベント「ドキドキワクワク土木体験イベント 驚きの砂防ダム現場に潜入!in稲佐山」が行われた。
砂防ダムを施工する本間建設(多以良町)が主催し、長崎振興局と長崎大学職員の「デミー博士」こと出水享さんの協力で実現した同イベント。土木の仕事や砂防ダムの役割などについて、実際に防災工事の現場に潜入し遊びながら知ってもらおうと、長崎県内の小中高生10組を保護者同伴で招待し開催した。
もみじ谷斎場の駐車場に集合した参加者にまず、出水さんが土木の仕事について長崎港口に架かる女神大橋などを例に日本の優れた土木技術を紹介。海外で手掛けた橋りょう工事などの実績によって現地の紙幣に日本の技術者の肖像が描かれていることなどを紹介しながら、「土木は優しさを形に変える仕事」と締めくくった。
次に長崎県建設部の岩永正幸さんが県の手掛ける防災工事の役割などについて説明。自然災害で亡くなる人のうち約4割が土石流やがけ崩れといった土砂災害によるものであることから、砂防ダムを設置することの重要性について紹介した。
説明が終わると、ヘルメットを受け取った参加者は駐車場から200メートルほど上流にさかのぼった砂防ダムを目指した。工事用に作られた道路の側に流れる渓流はわずかな流れしかないものの、周囲には大雨などによって流れ込んだ岩石が散乱していることから、砂防ダムが住宅地に土砂が迫る被害を防ぐ役割を担っていると説明を受けた。
砂防ダムの入り口ではまず、工事現場の観測に使われるドローンの実演が行われた。操縦手がドローンのスイッチを入れるとローターが勢いよく回転すると同時に浮かび上がり、子どもたちからは歓声が漏れた。ドローンから送られる映像をモニターで見ながら実際に工事現場を観測する様子を見学した子どもたちからは「すごい」という声が上がった。
次に子どもたちの呼び声に合わせてコンクリートミキサー車が登場。コンクリートを型枠に流し込む際に均等に流れ込むようにバイブレーターで衝撃を与え締固めする体験を行った。
その後、子どもたちは砂防ダムの内部を目指した。砂防ダムには土砂の流出を食い止める柵が設けられていることから、内部の様子を見学しながらその枠に的を設置した「岩石ストラックアウト」ゲームを楽しんだ。見事的を射抜いた子どもたちには賞品が贈られ、喜びの声が上がる一幕も。記念撮影とダムマニアの間でダムの完成を祝う際に行われるという「ダム式万歳」を行い、砂防ダムを後にした。砂防ダムは完成間近で、今後2~3年かけて周辺設備を含め完成させる予定。
最後に砂防ダムの入り口でミニバックホウに取り付けた針で風船を割るゲームを用意。子どもたちは作業員に手を添えられながらバックホウを操縦。風船が割れるたびに歓声が上がり、賞品を獲得していた。
駐車場に戻った参加者にはおでんが振る舞われ、参加者は冷えた体を温めながら舌鼓を打った。参加者からは「楽しいイベントだった。また機会があれば参加したい」という声も聞かれた。
「新型コロナウイルスの感染拡大を受け現場に足を運んでもらうイベントが全くできなかった。ようやく感染症対策を万全にし、少人数での開催にこぎ着けることができた」と話す岩永さん。「防災工事は土木の中でも目立たない仕事だが、安全な暮らしを守るために不可欠。1982(昭和57)に発生した長崎大水害が契機となって集落のそばにも砂防ダムを設置する必要性が認知され、今日の防災対策につながっている」と話す。「イベントを通じて子どもたちに土木の仕事を知ってもらい、『かっこいい仕事』と感じてもらうきっかけになれば」とも。