タイから来日している研究者が7月20日、こどもトレーニングひろば しろやま(長崎市城山町)を訪問し発達支援について学んだ。
同施設を訪問したのは、サームポン・ニサスリさん。サームポンさんはタイ国立マヒドン大学助教で小児理学療法を専門に研究。2017(平成29)年に日本車椅子シーティング協会が行う「アジア姿勢保持プロジェクト」の講習活動に参加したことをきっかけに日本の小児理学療法に興味を持ち、今年、東京都立大学人間健康科学研究科の博士課程に進学した。障害児のQOLやAIを活用した乳幼児の運動障害の早期発見などについて研究を行っている。
訪問は、同プロジェクトを通じて知り合た同施設で作業療法士として働いている脇葵依さんに「日本の小児理学療法の現場を実際に見て学びたい」と持ちかけ実現した。
同施設を運営するユースリー(梁川町)は2014(平成26)年に訪問看護ステーションを開設。小児の看護・リハビリにも力を入れており、長崎市内では重度の障がいをもつ子どもの発達支援を行うことができる施設がほとんどなかったことから2017(平成29)年に同施設を開設。職員に医療的ケアの研修を行うことで、看護師などの資格がない職員もケアに対応できるという。
施設を訪れたサームポンさんは社長の宮田貴史さんと脇さんの案内で、胃ろうなど医療的ケアを必要とする子どもの食事介助の現場などを見学。医療的ケアを行う現場で必要な知識や設備などについて見識を深めた。
サームポンさんによると、タイの理学療法の現場は日本と比べると10年は遅れているといい、特に地方では、障がい者向けの補助椅子がなく、床で食事を取る生活習慣があるため重度障がい者や高齢者を寝たきりで生活させてしまうことが二次障がいにつながるケースも多いという。
「タイでは障がい児が椅子に座るための個別評価を行う知識やスキルが不足している」と話すサームポンさん。タイには補助椅子を制作するための材料や設備もないことから「将来、タイでもこのような放課後等ディサービスや訪問看護、リハビリなど地域で障がい児をサポートするサービスが展開されるように取り組んでいきたい。まずは日本での経験を伝え、学術的にも実践的にも母国への定着を促すきっかけになれば」と意気込む。