西部川崎(本社=諫早市)が所有する迎賓館「迎仙閣(ぎょうせんかく)」(長崎市松原町)が11月26日・27日の2日間、一般公開された。
国道34号線沿いに位置する同所は紙業を営む故・井上米一郎が1946(昭和21)年に自身の邸宅として建築した日本庭園付きの平屋木造家屋(面積=約500平方メートル)。約3300平方メートルの庭園は目の前にそびえる行仙嶽(標高=約456メートル)を借景として望む。
井上米一郎の没後は親和銀行(佐世保市)が譲り受け、現在は建設機械の修理・販売・リースなどを取り扱う西部川崎が所有。同社のグループ企業が迎賓館や社員の福利厚生施設として利用する非公開施設だが、毎年2日間だけ無料で一般に公開している。
同所がある古賀地区は樹木の産地として九州最古とされ400年を超える歴史がある。同所の庭園では四季折々の花が咲き、季節ごとの景色を楽しむことができる。1954(昭和29)年に歌人・吉井勇が同所を訪れ、「うつし世に やはらぎあれと 今日もまた 迎仙嶽を 見つつ祈りぬ」と詠み、「迎仙閣」と命名。家屋の玄関前には長崎県文化功労者で小曽根流篆隷書の書家・小曽根星堂(本名=均治郎、1889~1984)が揮毫(きごう)した「迎仙閣」の石碑が立つ。
園内には1955(昭和30)年に訪れた俳人・高浜虚子や長崎生まれの俳人・向井去来(1651~1704)が詠んだ句碑が立てられている。2カ所ある池ではニシキゴイが泳ぐほか、中国原産の多年生常緑で竹茎の断面が正方形になっていることが特徴の「四方竹(しほうちく)」が植えられた竹林もある。
当日は高齢者の夫婦、子ども連れや若いカップルなど多くの見学客でにぎわいを見せた。シーズンを迎え色鮮やかに染まった紅葉をバックに写真を撮ったり、スタッフの説明を聞きながら庭園を散策したりするなど思い思いに楽しむ姿もあった。
男性スタッフの一人は「コロナ禍で中止となったことを除けば毎年公開している。今年は一般公開を行うことができ、皆さんに楽しんでもらえてうれしい」と笑顔を見せる。