フレネルレンズの誕生200周年を記念するオンラインイベントが12月4日に行われ、伊王島灯台(長崎市伊王島町)から中継された。
灯台がともる姿やフレネルレンズの造形など灯台の美しさに魅了され、灯台マニアとしてフリーペーパー「灯台どうだい?」の刊行や灯台イベントを行う不動まゆうさんが企画した同イベント。フレネルレンズは灯台や投光機などで使われるレンズで、レンズ表面に同心円状の切れ込みを入れノコギリ状の断面とすることで光を遠くに届けることを目的としている。灯台に使われる反射鏡の代わりとして開発したフランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルに由来する。
16時に始まったイベントでは不動さんらがフレネルレンズの仕組みなどについて解説。事前収録した日本各地の灯台がともるシーンなどの映像を楽しんだ。唯一の中継となった伊王島灯台からは長崎大学職員でインフラ維持管理の技術者養成に携わりながら子ども向けのイベントなどを行っているデミー博士こと出水享さんと土木写真部として活動するちえぞうさんが映像配信を行った。
同灯台は1866年に江戸幕府がアメリカ・イギリス・フランス・オランダの4カ国と締結した江戸条約に基づき国内8カ所に設置した灯台の一つ。日本初の洋式鉄造六角形の灯台で九州初の洋式灯台としてスコットランド人技師のR・H・ブラントンが建て、1871(明治4)年に点灯。1945(昭和20)年8月9日に投下された原子爆弾で被災したことから、1954(昭和29)に四角形の鉄筋コンクリート造で建て直されていたが、2003(平成15)年の改修で建設当初の六角形の形状に復元され3代目となる。上部の灯室(ドーム)は150年以上前の建設当初のものが使われている。
灯台に設置されたセンサーで暗くなると自動的に灯る仕組みとなっていることから、出水さんらはイベント開始と同時に時折解説を交えながら映像を配信。西の空に夕焼けが差し、日が落ちかけた5時12分、灯台のレンズがゆっくりと回転を始め緑色の明かりがともった。この明かりは光源に使われているメタルハイドロランプの特性によるもので「エメラルドタイム」と呼ばれ、灯台がともり始める数分間だけ見ることができる。出水さんは周囲が暗くなっていくとともに灯台の光も徐々に白色に変化していく様子をリアルタイムで届けるとネットを通して歓声が上がった。
不動さんは配信で「フレネルレンズによって多くの海難事故の防ぎ多くの人命が守られただけでなく、美しさでも魅了してくれる灯台。イベントが灯台ファン、レンズフェチだけでなく多くの人がつながるきっかけになれば」と話す。灯台の光源がLEDに置き換わっており、エメラルドタイムが見られる灯台は減っていることから、出水さんは「このような趣深い灯台の一面も知ってもらえれば」と笑顔を見せる。