長崎東高校(長崎市立山5)の生徒3人が「みんなにやさしいながさきトイレマップ」を制作し、2月9日、田上富久長崎市長に贈った。
マップを制作したのは同校3年の川端美晴さん、友永文佳さん、堤響生さんの3人。一昨年、総合学習の一環として同校で行われた「みんなにやさしいトイレ会議」実行委員長の竹中晴美さんによるトイレセミナーがきっかけでトイレに関心を持った。
竹中さんは、大人から子ども、お年寄り、体の不自由な人まで「みんなにやさしいトイレ」を利用する市民だけでなく、設置する行政や専門家の3つの視点から提言する活動を行っている。設立から13年目を迎える同団体。今年1月に供用開始となった長崎市役所新庁舎をはじめ、これまで長崎市内の公衆トイレや公共施設のトイレ14カ所の設置に携わってきた。出島メッセ長崎(尾上町)のトイレは2021年度の「グッドトイレ選奨」で一般投票特別奨に選ばれている。マップ制作でも3人へのアドバイスなどを行った。
3年生になった生徒らは「より使いやすいトイレ」について何ができるかを考え、ネットでさまざまなトイレマップについて調べたところ、「どこのトイレにどんな設備があるのか分かりにくい」と感じたという。そこで生徒らは市内26カ所の公衆トイレや商業施設内にあるトイレに実際に見て回り、リサーチ。同時にトイレ利用に困難がある人のニーズを調べ、マップに掲載する評価基準を決めた。
マップには生徒らが掲載基準を満たしていると判断した22カ所のトイレを紹介。多目的トイレのやオストメイトの有無だけでなく、ベビーチェアや便利フック、手すりなど、さまざまな人が必要とする設備の設置状況をまとめている。
市役所で行われた贈呈式には、まちづくりに携わる市役所の職員らも参加。マップ制作までの報告を行った後、田上市長にマップを手渡した。その後、懇談の場も設け、川端さんは「手描きの地図から、どうやってマップを作ればいいか分からずに苦労した」と話した。「評価基準や記載方法に頭を悩ませた」という友永さん。堤さんは「女性しかいないため、男子トイレまで調べることができなかった」と振り返る。市担当者からは「トイレを設置する場合、防犯面で見通しを良くしたほういいものの、利用者からは目隠しをしてほしいなど利用者と設置する側で意見が食い違う難しさがある」などトイレ設置の難しさなどを説明。行政側と利用者側両面からの意見交換が行われた。
「初めはジェンダーの問題に興味があり、トイレに関心があったわけではない」と話す3人。セミナーで出島メッセ長崎にジェンダーレストイレが設置されていることを知り、「普段何気なく使いっているトイレに凝らされたさまざまな工夫を知ったことで奥深さに気づき、トイレに対する見方が変わった」と笑顔を見せる。
協賛したやなぎクリニック(万屋町)の柳忠宏院長は「トイレの不便さがどれほどのものか健康な人はなかなか気づかないが、誰もが一生付き合うもの。若い人に関心を持ってもらえたことはうれしい」と話す。
贈呈式後に観光政策課を訪れた3人は担当者にマップを手渡し、「観光施設など多くの人が訪れる場所で配布してほしい」と伝えた。「誰もが快適にトイレをすぐ探せるよう、活用してほしい」とも。
マップは市内の観光施設などで配布するほか、市ホームページにも掲載する予定。