野良猫の避妊去勢クリニック「長崎さくらねこクリニック」(長崎市香焼町)が3月2日、開業した。運営は長崎さくらねこの会(魚の町、TEL 080-2203-9329)。
同会代表の山野順子さんは2018(平成30)年、任意団体「長崎さくら猫の会」を立ち上げ、不妊去勢後に元の場所に戻し、餌やりやふん尿の清掃を行いながら地域猫として管理する「TNRM」活動をスタート。2022年3月に一般社団法人化し、行政とも協働して飼い主がいない猫の問題に取り組み、依頼を受けて他の地域のTNRや保護して去勢後に人に慣らした上で譲渡する「TNTA」活動にも取り組んでいる。2022年4月に老猫ホームとキャットホテルを併設する譲渡型保護猫シェルターの開設を目指してクラウドファンディングで支援を呼びかけ、昨年2月、「咲く猫 Plus(プラス)」を開所した。
「本来は外に猫がいないのが一番いい状態」という理念の下、活動を続けてきた山野さん。猫の繁殖力は驚異的というほどすごい反面、全ての動物病院が野良猫の不妊化に対応しておらず、ペットとして飼われている動物の処置が優先される状況に山野さんは「不幸な猫を増やさないためには不妊化しかない。自ら専門クリニックを立ち上げるしかない」と決意。昨年6月からクラウドファンディングで支援を呼びかけ、約660万円の寄付が集まっていた。
クリニックはシェルターと同じ建物内に開設。クラウドファンディング終了後に獣医師と契約し、準備を進めていた山野さん。建物の増改築が基準を満たしていないことが判明し、計画を変更するなど紆余(うよ)曲折がありながらも冷暖房完備の待機室を備え、猫の体調管理に配慮したクリニック開設にこぎ着けた。開設目前に2人目の獣医師とも契約。月の半分程度は手術ができる体制を整え、一般的なクリニックより安価で利用できるようにした。
避妊手術(1万1,000円)と去勢手術(6,000円)のほか、ウイルス検査やワクチン接種にも対応。捕獲器での搬入が必須で、捕獲器の貸し出しや捕獲依頼にも対応する。
「動物愛護の分野はボランティアに依存する部分が大きい。手を貸してくれる人にも生活があり、ボランティアという責任の所在などがあいまいな状況にある」と考える山野さんは、クリニックを事業として持続できる体制を目指す。「スタッフにもプロ意識を持って対応してもらえるよう、ボランティアではなく雇用につなげることで、猫にも、人にも、良い体制にしていきたい」と意気込む。
手術は予約制で、受付時間は9時~18時。長崎さくらねこの会で受け付ける。