長崎のお盆の伝統行事「精霊流し」が8月15日、長崎各地で行われた。
爆竹の音が鳴り響く中、多くの精霊船が練り歩く精霊流しは長崎の夏の風物詩として知られ、わらや木で作った船に家紋や家名、町名が記された長く突き出した船首(みよし)が特徴。供え物と共に故人の趣味や趣向を盛り込んで装飾し、耳をつんざくほどの爆竹の音が鳴り響く中を鐘の音と共に「ドーイドーイ」の掛け声で初盆を迎えた故人の霊を西方浄土へ送り出すため街を練り歩く。長崎市内では警察の通行許可が必要な2メートル以上の精霊船だけでも380隻ほどが流された。
訪問型ペット火葬を手がける「Ottotte(オットッテ)」(長与町高田郷)では昨年から「家族の一員だったペットへの感謝の思いと供養の気持ちを届ける手伝いをしたい」と初盆供養祭と精霊流しを開催。今年は犬や猫、ウサギ、ハムスターなど約70匹のもやい船となる全長6メートルの「オットッテ丸」を用意。カラフルなちょうちんに彩られた精霊船は飼い主らも装飾を手伝い、17時にセレモニーホールを出発。長崎市松山町にある流し場を目指した。
景観まちづくり団体「null長崎都市・景観研究所」所長の平山広孝さんは、昨年10月に90歳で亡くなった祖父・秀則さんの精霊船を自宅がある万屋町で手作りした。平山さんは「長崎の精霊船は豪華な装飾が特徴で、親戚や地域の人も協力しながら作り上げる」と話す。一方、流し場に持っていくと廃棄物として処分されてしまうことや、自作するにはハードルが高く、人口減少などで担い手も減りつつある。
平山さんは「環境への負担を減らし、少人数でもより手軽に作れるこれからの時代に合わせた精霊船を提案したい」と100円ショップで入手できる紙管などを使い、低予算で手軽に作れる精霊船の開発に着手。同団体メンバーの協力を得て3Dプリンターでジョイント部品を設計し、全長1.9メートルの精霊船に仕上げた。今後、ジョイント部品の設計データや作り方などをオープンソースとして公開し、「精霊船を作るハードルの高さで諦めていた人にもチャレンジしてもらうことで、地元の伝統行事の継承にもつなげたい」と期待を込める。
この日、長崎市内では亡くなった人を送る精霊船の行列が夜遅くまで続いた。