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長崎・光源寺で再犯防止教育実録映画上映 更生支援の意義をアピール

講演会で更生支援の意義を訴える川中さんら

講演会で更生支援の意義を訴える川中さんら

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 再犯防止教育ドキュメンタリー映画「道しるべ」の上映会が8月31日、光源寺(長崎市伊良林1)で行われた。

集合写真

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 訪問保育を手がける「Nannyいっしょ」(三和町)が主催する同イベント。代表の西有希さんは虐待サバイバーで幼い頃に負った心の傷から自殺未遂を経験。現在は3人の子どもを育てる母親として子育てに奮闘しているが、幼少期の辛い思い出から産後うつになってしまったこともある。「幼少期の家庭環境の重要性が叫ばれる中、身を持って実感した」という西さん。「子どもたちに関わる全ての人たちに、ちょっとだけ視野を広げてほしい」と同イベントを企画した。

 当日は昼夜の2部で、合わせて200人ほどが集まった。映画は再犯防止活動に取り組む一般社団法人「チャンスサポート」代表理事の川中正喜さんと同理事の岡田さえさんが製作・出演。「あなたは誰の人生に登場しますか?」というメッセージと共に、罪を犯してしまった加害者の更生支援の現場を加害者が過ごしてきた幼少期の環境に着目して描く。

 上映後は元アナウンサーで長崎市議会議員の高橋けいこさんが司会を務め、川中さんと台風10号の影響で来崎できなかった岡田さんがオンラインで参加してディスカッション形式での講演会も開催。西さんも交え、来場者からの質問に答える形で進めた。

 講演会では「更生支援している人から裏切られ、怒りを覚えることもあるのでは」という質問に「裏切られるというのは、そもそも期待しているから」と返した川中さん。暴力が当たり前の家庭で育ったという川中さんは「問題を暴力で片付けることがある種の成功体験となっていた。当時は人を殴ることが悪いことではないと思っていなかったが、中3で逮捕され、刑務所で14年過ごすことになった。自分は、たまたまいけないことと気づくことができたが、犯罪を繰り返す多くの人はなかなか気づけない」と自らの体験を振り返る。

 岡田さんは「虐待されて育った子どもはその環境が当たり前で、虐待されていると思っていない。自分が虐待されていなくても親が毎日けんかし合っているような家庭では子どもが自分を守るために脳の一部の発達が止まり、物を盗むことが悪いと分からなくなることもある」と話す。「子どもは潜在的に親に対して無償の愛を持つ。親を守るために家庭内での辛いことを外で話さないことも多い」とも。

 反社として登録されたことから出所後も通帳が作れなかったことを振り返る川中さん。「更生したいのに通帳も住所も持てないことで第一歩が踏み出せない。再出発のために更生を支援しないと、さらに犯罪に手を染め、誰かが巻き込まれる」と支援を続ける理由を訴えた。

 「来場者へのアンケートで『DV・虐待・不登校、親子関係など身近に悩んでる人がいる』という項目に約3割が『ある』と回答していた」と話す西さん。保育士を目指す学生からは「愛のある保育士になりたいと改めて思った」というメッセージもあったという。

 今後はベビーシッターとしての事業を法人化し、「企業と提携しながら長崎を子育てしやすい街にしていきたい」と意気込む西さん。「イベントを企画したことで、同じように虐待を受けてきた人や見えないけど悩んでいたり、悩んでいる自覚がなかったりする人も多くいることを改めて実感した。川中さんらの熱意を共感し、会場が一体感に包まれた感覚がある。活動を続けることで長崎が変われば」と期待を込める。

 イベントに参加できなかった人のために現在、アーカイブ配信を行っている。配信チケット(3,000円)を購入すると2人まで視聴できる。ウェブサイトで9月13日まで、申し込める。

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