長崎の伊良林地区一帯で3月10日、対州馬(たいしゅうば)で荷物を運ぶ姿を再現するイベントが行われた。長崎のイラストレーター江島達也さんら「長崎対州馬応援団」が企画した。
風頭公園の龍馬之像前に笑顔で到着した「長崎対州馬応援団」(写真提供=高橋幸秀さん)
コースは若宮稲荷神社の第1鳥居付近を出発し、途中若宮稲荷神社、亀山社中記念館前を通り風頭公園の龍馬之像までの坂道。細い坂や階段が続く道を、大村市のカフェで飼育されている対州馬の里子(さとこ)が約35キロの絵本200冊を背負って歩いた。
「頑張れ」という沿道の声援に応えるように急な階段をたてがみを揺らしながら一歩一歩駆け上がる里子に、伊良林の住人からは「懐かしい」という言葉も聞かれた。居合わせた観光客は、突然表れた馬に驚いた表情を見せた。県外から見学や撮影に訪れた人もいたという。若宮稲荷神社の境内では、若宮保育園の園児たちとの交流もあり里子の体に触れたり背にまたがるなどした。
2009年に荷運びをする馬方が引退して以来、長崎の坂から馬の姿が消えた。かつて100キロ近い建築資材などを担いで長崎の坂道を馬が歩く風景は、長崎で暮らす人にとって当たり前の光景だったが、里子にとっては初めての経験。事前練習したときは坂道を怖がるそぶりを見せたという。
「私たちが当たり前のように見ていた光景は、馬方と馬が信頼関係を結び、忍耐を持って働いていた姿だったことを痛感した。練習で怖がる里子の姿に不安があったが、当日、期待以上に張り切って坂道を歩く里子に感動した。里子が頑張る姿が東北の人にもニュースなどで伝われば」と江島さん。「今後も場所を変えてイベントを継続する予定。馬の姿を通して坂の町長崎の将来を考えたり、頭数が減る対州馬へ関心を向ける機会になれば」と話す。