長崎駅近くにある分紫山福済禅寺(長崎市筑後町)が現在、境内にある「鎮魂の鐘」の突き手を一般に開放している。
同寺は1626年、中国の僧侶によって創建された禅寺。大書院には日本や中国の有名な絵画の大作などもあり、過去にはアメリカ大統領グラント将軍夫妻、勝海舟、坂本竜馬など多くの要人が往来する国際色豊かな文化交流の場所だったという。1927(昭和2)年には国宝建造物に指定されたが、1945(昭和20)年8月9日の原爆投下により貴重な文化遺産は全て焼失し、広い境内はがれきの山と化した。
境内には先代(第30代)住職の故・三浦義光(ぎこう)さんが「戦艦陸奥」の遺材で作られた巨大な鉄かぶとの鎮魂碑やミャンマー(旧ビルマ)、フィリピンなどで収集した鉄かぶと、水筒や軍服などの遺品を数多く展示し、現在も引き継がれている。1977(昭和52)年に長与町で発見された旧海軍の魚雷も展示しているが、魚雷を製造した三菱重工業長崎造船所に近く返還される予定。
「鎮魂の鐘」は原爆犠牲者約7万人の供養のため、投下時刻の11時2分に1打1万人の霊を慰める意味で毎日7打するために造られた大鐘。誰でも突くことができる。同寺関係者は「以前は長崎駅から観音像が見えたので突きにくる人も少なくなかった。近くに来たらぜひ気軽に鐘を突きに来てほしい。鐘を突き、展示品を見て今の平和な世の中がずっと続くように祈ってもらえたら」と話す。