長崎のがん患者と医療従事者が合同でサロン会

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 メディカルウィッグ専門店「びよんど」(長崎市中町、TEL 095-828-7667)で10月12日、がん患者や医療関係者らを対象に専門医を招いて緩和ケアについて学ぶサロン会が開かれた。

緩和ケアの現状について話す中村医師

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 店主の藤田つたえさんは若い頃にがんを発症。自らの苦しい闘病生活の体験を振り返り、抗がん剤の影響などで頭髪が気になる患者らのためにメディカルウィッグ専門店を長崎市元船町に開業。メディアなどでも度々採り上げられ、口コミや紹介で訪れる人が少なくない。

 藤田さんは12年前にがん患者・家族の会「四葉のくろーばー」を発足。店休日にメンバーを集めて「サロン会」を開き、絵手紙教室やおしゃべり会、調理実習、ミニ門松作りなど、さまざまな活動を長年続けてきたが、家族の介護などの事情で2010年の年末を最後に活動は中断していた。昨年末に現在の場所に店舗を移転した後、活動を再開できる状況が整ったことから、今年4月から毎月第2土曜日の店休日にサロン会を再開した。以前は患者と家族の会だけの活動だったが、現在は医療従事者らが作るネットワーク組織「よかケアネット」と合同で開いている。

 今回のサロン会のテーマは「緩和ケアについて学ぶ勉強会」。講師に緩和ケアのスペシャリストで医師の中村秀男さんを招き、患者や看護師、介護福祉士など10人が受講した。中村医師が勤める出島病院は、前身の朝永病院が1995年に史跡出島の整備計画に伴い、旧出島の敷地内から現在地に移転・新築する際に長崎県内初となる12床の緩和ケア病棟(ホスピス)を開設した。現在、長崎県内には出島病院(出島町)、聖フランシスコ病院(小峰町)、千住病院(佐世保市)、南野病院(大村市)の4施設、合計77床の緩和ケア病棟があり、いずれも満員の状況だという。

 サロン会では初参加者も数人いたため、自己紹介から開始。闘病生活が10年以上、6年、4年という人たちに混じって発病して日が浅い参加者には、自らの体験に基づくアドバイスなども飛び交い、看護師の中には自らもがんの闘病体験を持つ人もいた。「一般的に『もはや治療法がないと病院に見放された』『何も治療らしいことはしない』『悪性腫瘍の人だけが対象』などのイメージで緩和ケアを捉えている人が少なくない。しかし、実際にはさまざまな取り組みを行っていると同時に、さまざまな制約、限界などの問題点もある。正しく知ってもらいたい」と熱心に受講者らに話しかける中村医師。ホスピス内では飲酒が許されていることを話すと、参加者らは「へえー」と驚いていた。

 中村医師は長崎東高校を経て秋田大学医学部を卒業。1980(昭和55)年、長崎大学病院血液内科を皮切りに医師としての生活を始めたが、ある出来事をきっかけに緩和ケアに取り組むようになったという。2001年9月11日、中村医師がアメリカの医療施設の視察ツアーに参加して訪れる予定だった病院は、貿易センタービルの目と鼻の先にあった。「まるで映画のワンシーンを見ているようだった」と振り返る。視察は中止となり帰国も4日遅れた中村医師。臨床医ではなく研究職を目指していた自分自身に自問自答した結果、患者のためではなく自分のためだけに生きようとしていたことに気づいたというエピソードに参加者らは黙ってうなずきながら耳を傾けていたが、「実は白い巨塔が苦手だった」と冗談で締めくくった中村医師に一斉に笑いと拍手が起こった。

 藤田さんは「狭い店内なのでせいぜい10人程度しか集まれないが、患者と医療関係者が和気あいあいと本音で語り合える場所はさほど多くない。ここでは孤独で情報が少ない患者でも、同じ痛みを知る人たちと情報を共有できるのが心強いと言ってもらえるのがうれしい。いずれ私がいなくなった後でも、この小さい店が小さいながらも意義ある活動の拠点として引き継がれるようにコツコツと頑張っていきたい」と話す。

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