長崎の江戸町商店街振興会が2月26日、江戸町の歴史などをつづった看板を同エリア内に設置し除幕式を行った。
江戸町商店街の歴史は440年ほど前の1571年までさかのぼる。現在の江戸町エリアの大半を占めるのは、長崎県庁舎。歴史をたどると、長崎海軍伝習所、長崎奉行所西役所やイエズス会本部などの跡地として知られており、「どの時代においても日本の歴史と直結していると言ってもいい場所」と、三瀬(みせ)清一朗振興会会長。以前は「長久橋通り」と呼ばれていた同商店街は、長崎市の中心部が現在のような街並みになる以前、江戸時代から戦後しばらくの間まで長崎随一のにぎわいで知られ、特に三菱長崎造船所の給料日には多くの人でごった返したという。
看板設置の機運が高まるきっかけは2年ほど前。客足が遠のく商店街にもう一度活気を取りもどす方法はないかと商店街のメンバーらが調べていたところ、地元の人たちでも知らないようなストーリーが町のあちこちに潜んでいることに気が付いた。「ここにしかない街の良さを探そう」。三瀬会長らのベテラン経営者と、若くデザインセンスなどを持ち合わせた店主らがタッグを組み、それぞれの強みを生かしながら何度も会合を開いた。
三瀬会長は「そこにちょうど長崎市商業振興課などの担当者をはじめ、近隣の商店街役員など多くの人たちとのご縁があった。町おこしのための助成金を申請してみようということになった。このご縁に感謝している」と話す。予定する事業は2つ。江戸町の歴史を中心にしたパンフレット「グルメ史跡マップ」の製作と、パンフレットを基にした街並み看板の設置。ところが、助成金申請は最初からスムーズだったわけではなかったという。
「ともかく、書類申請一つとってみても難しかった。細かいところまで何度も何度もやり直した。知人からも助成金は、なかなか出ないとだろうと言われたので無事に今日が迎えられたことがありがたい」とも。
「グルメ史跡マップ」は中小企業庁の地域商店街活性化事業助成金を活用。歴史の紹介とともに、エリア内の商店を紹介している。看板の設置費用には市の街づくり関連の助成金を充てた。看板はマップの情報を基に作成されている。同振興会では看板の設置場所に困っていたため、商店街メンバーでもある老舗のお茶販売店「月香園」の経営者が無償で店舗前のスペースを提供した。
三瀬会長は「県庁下に国道34号線の原標が設置されていることも取り組みの中で知った。道路下に隠れて見えない「地獄川」と呼ばれる江戸時代ごろからの小さな水路もあり、桜町牢屋(現在の市役所付近)の罪人の血が流れてきたことから名付けられたのではないかと想像を巡らせている。調べれば調べるほど、あまりにたくさんの情報があって紹介しきれない。よく見てもらえばわかるが、江戸町は上空から見ると当時のオランダ人の靴底の形をしているのが面白い。橋を渡ると出島なので、向かいはオランダ、こちらは日本。坂本龍馬や勝海舟も通ったかもしれない。オランダ人が上陸して初めの一歩を踏んだ江戸町に思いをはせながら、ぜひ遊びに来てほしい」と呼び掛ける。
グルメ史跡マップはエリア内各店などで無料配布する。