提供:FFGベンチャービジネスパートナーズ 制作:長崎経済新聞編集部
長崎大学に10月からふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)からの寄付講座として「FFGアントレプレナーシップセンター」が開設され、すでに2020年4月からの本格開講に向けて準備が進められている。
アントレプレナーシップセンターは、FFGと長崎大学が交わした「産学連携の協力推進に係る協定」に基づいて、寄付講座であるアントレプレナーシップ教育や大学発ベンチャーを支援する拠点として長崎大学研究開発推進機構に開設されることになったもの。
FFGアントレプレナーシップセンターが入る長崎大学文教キャンパスの教育学部棟
同センターは、センター長の山下淳司教授とFFGベンチャービジネスパートナーズ・シニアアドバイザーで、弁理士でもある上條由紀子教授を中心に学外専門家数名を講師に招いて教育プログラムを提供。自立心、向上心を持って積極的に新しい価値想像にチャレンジし、自ら課題解決に取り組む「アントレプレナー人材」の育成を目指す。
アントレプレナーシップの入り口
同時に、FFGベンチャービジネスパートナーズとの連携によるインキュベーションプログラムの実施によりスタートアップ支援を行うことで長崎発のベンチャー創出を後押しし、地域経済の発展を目指していく。
鎖国だった江戸時代、長崎の出島が海外との窓口となり、この場所から新しいものが次々と日本へ入ってきてた。山下センター長は「亀山社中があり、坂本龍馬や勝海舟、福沢諭吉といった偉人が長崎で学んで幕末の日本を変えていった。長崎はまさに最先端の地で、そうした場所であったのは風土や地域性による部分もあったのでは」と話し、「長崎でイノベーションを起こし、アジアのゲートウェイとすることで再びイノベーションの中心地とすることができる。そんなポテンシャルのある場所。センターがそんなきっかけになる場所になれれば」と意気込む。
「地銀が大学と連携して教育プログラムを提供し、ベンチャー支援を行っていくのは初めての取り組みでは」とも。
センターの解説に向けて思いを話す上條教授と山下センター長
山下センター長によると寄付講座となる講義はどの学部や学科の学生でも受講可能で、単位取得も可能になるという。本年度もキックオフシンポジウムやプレセミナーを実施するほか、2020年度にスタートする本格的な講義に向けて準備が着々と進められている。>
「アントレプレナーシップ」とは、起業や製品開発などに向けた高い創造意欲と積極的に挑戦していく姿勢、マインドなどを指す「起業家精神」を意味する。アントレプレナーシップというと起業やベンチャービジネスの立ち上げを目指す学生向けと思われがちだが、近年では企業、NPO、官公庁でもアントレプレナーシップを持つ人材が求められるようになってきている。
上條教授は「アントレプレナーシップは、教科書や座学からだけではなく、実際にベンチャーを立ち上げてビジネスの現場で日々奮闘している起業家の方々から直接体験談を聞いたり、学生自身がサークル内でイベントを企画・実行したり、バイトのリーダーとして後輩の指導をしたりする現場においても学び、生かすことができ、社会に出ても役立つ場が多くある。アントレプレナーシップは将来の日本社会を担う若手人材に求められる必須の要素になるのではないか」と語気を強める。
アントレプレナーシップの重要性について話す上條教授
山下センター長は「誰もが起業を目指しているわけではない。起業を目指す上でも、一度は企業に入って経験を積むことが求められるケースもあるし、やりたいことが見つけられないまま大学生活を過ごす学生だっている」と話し、「センターは起業を目指す学生が集まる場ではなく、誰もが気軽に出入りできる場にしたい。悩みを話したり、コーヒーを飲みに来て世間話をしたりするだけでも学生にとっては将来に役立つ時間になることもある。関わった学生が社会に出たときに『大学にこんな先生がいたな』『こんな話をしてたな』と記憶に残してもらうだけでも意味があるのでは」と話す。そんなアントレプレナーシップセンターの一角にはコーヒーコーナーも用意されている。
アントレプレナーシップのコーヒーコーナー
大学ではさまざまな研究が行われており、新たな技術が生み出されている反面、ビジネスに活用できていないケースが多くある。同センターでは、大学の各学部から技術シーズについてヒアリングを行い、特許分析や市場調査などを行ったうえで活用できる技術シーズと民間企業とマッチングを行うなど、FFGベンチャービジネスパートナーズとの連携を生かした事業化支援を行うことで大学発ベンチャーの育成を目指す。
中長期的には課題解決に取り組む学生にアントレプレナー教育を施し、人材育成を通して学生ベンチャーの創出にも取り組んでいくという。民間企業と大学の技術シーズとをマッチングさせて実用化・事業化する支援とアントレプレナーシップ教育・研究との両輪で長崎からイノベーションを起こし、市場拡大につなげることを狙う。山下センター長は「長崎をイノベーションの中心地にしたい」と意気込む。
ベンチャー支援への意気込みを話す山下センター長
「国内外でアントレプレナー教育への試みが積極的に始まっており、先達の皆さんから多くを学ばせていただいた上で、長崎大学でアントレプレナーシップ教育・研究を行う意義をしっかり見出していきたい」と話す上條教授。近年は起業のプロセスごとにリスクを減らす科学的な方法が見いだされつつあることから、「先人の足跡を学び、長崎の地域性を生かしたアントレ教育・研究やベンチャー創出支援を行っていきたい」と展望を話す。
グローバル化と言われて久しいが、「多くの人は海外に売り込みに行くことがグローバル化と思っているのではないかと感じる」と話す上條教授。「長崎で地域課題の解決に向けて研究した成果が他の国や地域でも生かせることはたくさんある。『長崎だけで活用する』のではなく、世界に目を向けて『世界にも応用していく』という視点を持つだけでも十分にグローバルだと言える」と話し、「こういった考え方の違いを持てる人材を育てることができるだけでも地域にとっては大きな効果がある」とセンター開設への思いを話す。
上條教授と山下センター長
山下センター長は、「大学では教育だけで終わってしまいがちだが、FFGが民間企業として関わっていることで、今までにないオリジナリティーを持ったアントレプレナーシップセンターとなる。地銀が手掛けているからこそ地域に提供できる価値がある」と意気込む。学生たちに向けては、「広い視野とグローバル視点を養ってほしい」と話し、「研究して終わりではなく、これからは世界に対して攻めていける考えを持った若者を排出していきたい」と笑顔を見せる。