長崎市内の貸し会議室で6月8日、東京大学先端科学技術研究センター・中邑賢龍教授の長崎講演会を準備する「ROCKET発射準備・長崎実行委員会」(仮称)の初会合が開かれた。
名称は同センターと日本財団が共同プロジェクトとして昨年スタートした「異才発掘プロジェクト・ROCKET」から名付けた。ROCKETとは、「Room Of Children with Kokorozashi and Extraordinary Talents」の略称で、突出した能力があるにもかかわらず現状の教育環境になじめず、不登校傾向にある小・中学生を選抜して継続的な学習保障や生活サポートを提供するプログラム。本年度の募集期間は6月15日~30日。
発達障がいや不登校傾向にある子どものための個別学習塾「凸凹楽習塾(でこぼこがくしゅうじゅく) 勉強ラボ」(長崎市虹が丘町)を2年前に立ち上げた白石直子塾長が呼び掛けたもので、各分野の専門家9人が集まり初会合を開いた。
先月、福岡で行われた中邑教授の講演会に参加した白石さんは、中邑教授が唱(とな)える説を聞いて「これこそ自分が求めていたもの」と感激。中邑教授に「長崎に来てください」と直談判し、快諾を得て3連休の最終日に当たる10月12日に長崎ブリックホール国際会議場(茂里町)を予約することができた。一夜明けて冷静になった白石さんは「講演会なんて一度もやったことがないし、やり方も知らない」ことに気づき、友人らに相談したところ「素晴らしいことだから、みんなで協力して進めよう」と賛同者が次々に集まった。
あいさつに続き、全員が自己紹介した後、白石さんがパワーポイントを使って趣旨を説明した。白石さんの長男は発達障がいと診断されたが「ある分野については天才としか思えない能力を発揮する」と力説。感情のコントロールが不得意という部分も、得意な分野を伸ばすことで結果的に不得意分野も改善されつつある現状を報告した。
白石さんの話を補足するように、自身の小学1年生の長女が生まれつきの病で脳の発達に偏りがあることを一人の女性参加者が吐露。「幼稚園の妹に手助けされることにプライドが傷つくらしく、『ママ、私ばかでごめんね』という言葉を聞いて、『あなたは決してばかじゃないよ』と何度も言い聞かせた。でも、その子が周囲の人を楽しませる才能はダントツ」と涙を流しながら訴える姿を見て、その母子を知るほかの参加者も大きくうなずき、プロジェクトの意義を全員で再確認した。
「確かに10月12日の講演会は大きな意義があるが、これだけで終わらせるのはもったいない。このプロジェクトの趣旨は、才能を伸ばすと同時に才能をつぶさない環境を創出すること。周囲の理解が不可欠なので、より多くの賛同者を集めよう」という方針をまとめ、予算の概算、大まかな進行内容、各自の役割分担を確認して閉会した。
白石さんは「勢いで会場を予約したが、私一人ではどうすることもできなかった。皆さんも自分たちのこととして捉えてもらい、ありがたい。子どもに同じような悩みを抱えている人が、たった10人の中でもこれだけいるのかと驚いた。みんなの力で、ぜひ意義あるものにしていきたい」と意気込む。