長崎で現役映画監督が「地域ドラマ制作講座」-ドラマ作りのコツを伝授

講義中の阿久根知昭監督

講義中の阿久根知昭監督

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 長崎経済新聞文化センター(長崎市万屋町)など2会場で12月26日、現役映画監督が「地域ドラマ制作講座」を開き、演劇や放送関係者、一般市民など合わせて30人を超える受講者でにぎわった。

受講者との記念撮影

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 講師は来春クランクイン予定の映画「はなちゃんのみそ汁」の阿久根知昭監督。同作は2012年に出版されて13万部を超えるベストセラーになった同名書籍の映画化。乳がんで余命宣告を受けながら、結婚・出産した母親が、自分の死後にも幼い娘がたくましく生きていけるよう、「毎朝みそ汁を作りなさい」と作り方を教えて亡くなった実話。これまでにもドキュメンタリーやテレビドラマとして映像化されたことがある。

 幼い娘を残して亡くなる主人公・安武千恵さん役を広末涼子さんが、夫で書籍の原作者・安武信吾さん役を滝藤賢一さんが演じる。千恵さんの姉・詩穂さん役を演じるシンガー・ソングライターの一青窈(ひととよう)さんが主題歌を担当する。同作の脚本も手掛ける阿久根さんは、2013年の「キネマ旬報ベストテン」で日本映画ベストワンを獲得した映画「ペコロスの母に会いに行く」で脚本を担当した。

 講座は同会場で夜の部を、「りぼん」(万屋町)で昼の部を開催。主催した「作家ギルド長崎支部」は阿久根さんがプロの脚本家などを中心に組織する団体「WRITE STAFF GUILD」の支部組織として今年11月に発足したばかり。映画「ペコロスの母」は同団体が初めて手掛けた商業映画。ほかにもさまざまな脚本執筆や演出依頼に対応している。

 受講者には映画「ペコロスの母に会いに行く」の脚本を配布。「これは最終決定稿だが、それでも実際の映画と微妙に違うことに気づくと思う。なぜなら撮影現場で変更されたから。森崎監督の指示などで41回書き直した」と阿久根さん。受講者からは「41回も」と驚きの声が上がった。

 阿久根さんは「脚本家は地道に努力してなるものではない。いきなり今日からやってみるものだ」と持論を展開。自身が10代の頃、入院中の病院で若い女性看護師に「阿久根さんは漫画がとっても上手だから、漫画家になったらいいのに」と言われてプロの漫画家からスタートしたエピソードを披露。声色を変え、女性看護師の身振り手振りを真似しながら話す阿久根さんの姿に会場からはどっと笑い声が起こった。「努力して漫画家になった人には申し訳ないが、漫画家になりたくてなったのではない。脚本家になったのも突然だった。いきなりプロの舞台に立たされて、傷つきながらも夢中でやってきたから今がある」と振り返った。

 「ロッキーは、なぜ永遠に感動する映画に仕上がったのか」という話題では、自身を主役にすることを条件に脚本を書いたシルベスタ・スタローンさんが映画関係者に持ち込んだストーリーとは「異なる結末に変えたから」と分析。「当初の予定通りロッキーが試合に勝って絶世の美女と抱き合って喜んだら、誰も二度と見ないでしょ。そうじゃないから何回見ても感動する」と解説。「ロッキーは人生そのものに勝った」と締めくくると、多くの受講者がうなずいた。そのほか「感動するストーリーを作る4つのテクニック」「観客を飽きさせない方法」「ドラマ作りのアプローチ」などドラマ作りの理論を説明。講座終了後、参加した男子高校生の質問にも時間をかけて丁寧に答えていた。

 受講したテレビ局のディレクターは「ネットで知って参加した。予想以上に大変勉強になった。今後の企画に生かしたい」と話し、講座終了後は熱心に質問していた。長崎市内に住む深堀道子さんは「やりたいことがたくさんあるが文章を書くのは大の苦手。しかし阿久根監督の話を聞いて、自分でも書いてみたいと強く思った」とほほ笑む。

 阿久根さんは「地域には素晴らしいストーリーがたくさんあるのに、東京からの目線で映画やテレビドラマが作られることはあっても、地元の作家の目線から作られる機会はめったにない。だから、その地域に根ざす多くの書き手を誕生させ、そこに現場を作ろうというのが自分たちの狙い。長崎で最初の講座を開くことができたのは大変意義深い。今後も長崎の人たちと協力して、長崎を舞台にしたたくさんのドラマ作品を世に出したい」と力を込める。

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