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若手パティスリーが長崎県洋菓子コンテストで金賞 新たな取り組みにも挑戦

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 長崎新聞文化ホールアストピア(長崎市茂里町)で6月22日、「長崎県洋菓子コンテスト2022」が行われ、パティスリー フェリーチェ(本店=弁天町)でパティシエを務める江原翔太さん(22)がグランガトー部門の金賞を獲得した。

 

賞状を手に笑顔を見せる江原さん

 

 コンテストは洋菓子業界の発展と若手職人の技術向上を目的に長崎県洋菓子協会が毎年開催。日本洋菓子協会連合会が10月に開催する「ジャパン・ケーキショー」の予選も兼ねることから長崎県内の洋菓子店で活躍している若手パティシエや製菓を学ぶ学生などが技術を競う場になっている。

 

 江原さんは高校卒業後、パティシエを目指して東京の専門学校に進学。卒業後は都内の洋菓子店で働いていたが退職し、知見を深めようと全国の洋菓子店を巡った後、父が経営する同店に入った。

 

 昨年の同コンテストでも銀賞を獲得した江原さん。ジャパン・ケーキショーでは惜しくも入賞は逃したが、長崎からケーキを運ぶことは難しいと判断し東京の友人宅に道具や材料を持ち込んで作品を仕上げて出場していた。

 

 ジャパンケーキ・ショーが終わってからすぐに今年のコンテストに向けて作品の構想など準備を進めてきたという江原さん。今年は自分の名前の一字「翔」を表現しようとチョコレートケーキを水面に見立て白鳥が羽ばたく様子を表現した。

 

江原さんが今年のコンテストに出品した作品

 

 ケーキは外側からチョコ、チョコムース、ハイベリーのジュレ、ハイベリーとフランボワーズのムース、ダージリンのクリーム、フランボワーズとハイベリーのコンクチュール、紅茶のビスキュイ、ミルクチョコレートのガナッシュと層を重ねた。ハイベリーは入手困難な希少食材のため、東京にいる知人のパティシエなどを通じてコンテスト前にどうにか1キロほどの量をかき集めた。コンテストの10日ほど前から素材の組み合わせなど50回以上にわたって試行錯誤を繰り返し完成させたという。

 

江原さんが今年のコンテストに出品した作品の断面

 

 グランガトー部門ではホールケーキの見た目や味を競う。コンテストの審査委員長を務めた「旬菓工房ラ・フェーヴ」(諫早市)の河合重久さんは、同部門の審査のポイントとして、「まずはお客さんに選んで買ってもらうという部分で見た目の美しさがポイントになる」という。ケーキをカットした際も層がきれいになっているかという部分で見た目のバランスや作り込みの技術が問われるとともに、素材の組み合わせや食感、味のバランスなどが審査されるという。

 

 江原さんの作品について、河合さんは「高い技術が求められるようなパティスリーで働いていた経験だけでなく、各地のパティスリーに出向くなど向上心の高さが金賞につながったのでは」と話す。

 

 主催する長崎県洋菓子協会の甘木阿津美会長は「新型コロナウイルス感染拡大の影響もありコンテストへの出場者も減少傾向にあるものの、特に若いパティシエのレベルや質の高さが際立っている」と話す。コンテストに参加することで他の店とのつながりや情報交換の場にもなることから、「特に若いパティシエには経験を積み、技術を身に付けて賞を目指したり、独立して店を構えたりするなど、彼らが中心になって業界を引っ張ってもらえるような環境を目指していきたい」とも。

 

 江原さんはSNSでオーダーケーキの受注を行うなど新たな取り組みにも積極的に挑戦。店頭でも「稲佐山」や「レアチーズ」など自身が手がけるケーキのラインアップを増やしている。江原さんは「一人でも多くの人に自分が作ったケーキを食べてもらいたい。今後もさらに上を目指して努力していきたい」と意気込む。

 

店の目の前にある長崎のシンボル・稲佐山をモチーフにしたケーキ「稲佐山」

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