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「おしゃれな」スタイルを貫く警備会社 長崎から新たなムーブメント目指す

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 交通警備やイベント警備を行う「ユニバーサルガード」(長崎市玉園町)が「おしゃれな警備会社」を掲げ、社長の田崎相さんが旗振り役となって、さまざまな取り組みに挑戦している。

 

《ユニフォームに身を包み交通警備の現場に立つ田崎さん》

 

 1991(平成3)年創業で、熊本や大分にも拠点を展開している同社を1年ほど前に引き継いだ田崎さん。「警備会社というと年配の方がアルバイトや非正規で空いた時間に働く、きつくて稼げないというイメージを取り払いたい」とアルバイトや非正規での雇用をやめ、正社員採用のみとした。「社員第一主義」という一貫した考えの下、2022年10月にまず取り組んだのは事務所のフルリノベーションだった。

 


《事務所内観》

 

 「来る会社を間違ったのでは」「警備会社の事務所と思えない」という来客の声に笑顔が隠せないという田崎さん。木の質感を生かし、カフェやバーのような雰囲気の室内は仕切りをなくすことで見通しの良さにこだわった。デスクトップパソコンなどを全廃してすべてノートパソコンに。使わないときは収納できるロッカーを用意することで、気分や用途に合わせて好きな場所で仕事ができるフリーアドレスを導入した。

 

《事務所内観》

 

 田崎さんは「警備の仕事は直行直帰することもでき、事務所を構えなくても成立するが、顔を合わせる時間も大切。顔を合わせることでスタッフ間の連携も取りやすくなる」と話す。

 

《事務所内観》

 

 SNSなどのツール活用にも力を入れる同社。「若手社員がスマートフォンをいじっていたら年配社員にはサボっていると見えるかもしれない。ツールの使い方や何をしているのかを教えることで理解が生まれる。ジェネレーションギャップなどと言うが、何をしているのか分からないから疑惑が生まれ対立の原因になる」と話す田崎さん。事務所の見通しの良さにこだわるのも「応接室にこもって密談するより、誰がどんな話をしているのか包み隠さず、あえてさらけ出してしまう。新しい仕事が決まっても誰かが話を聞いてスケジュールを組んだり、共有したりする手間もなくなる」と話す。

 

《事務所で思いを話す田崎社長》

 

 田崎さんは学生時代、友人や先輩らが「長崎は何もないので稼げない」と都市部に出ていく姿を見て、「高収入な都会では家賃や生活費も高い。それなら地元に残り、長崎ならではの良さを知り、若者が長崎に残る理由となる場をつくりたい」という思いが根底にあるという。20代で飛び込んだ警備の仕事に「楽しく働ける、おしゃれなセキュリティー会社を目指す」という目標を掲げて突き進んだ。

 

 琴海戸根原町にある田崎さんの自宅は「カフェのような家が欲しい」と考えていたが、たまたま廃業したカフェのログハウスがこの場所にあり、リフォームして住むことに決めたという。自宅の隣にあるガレージ「SGT ガレージ」には、1980年代半ばにイギリスで百数十台ほどのみ生産された2シーターロードスター「ネイラー・Hutson TF1700」やスバル「サンバートラック」など旧車が並び、車やバイクなどの趣味を楽しむ。「社員にも仕事もプライベートも一切手を抜かず楽しんでほしい」という思いから自ら先頭に立って体現している。

 

《琴海利根原町にあるSGTガレージ》

 

 社員も旧車など趣味を楽しんでいるといい、ガレージに社員が集まると駐車場にはズラリと旧車が並ぶ。旧車ドライブやバーベキューなど楽しみながら明日の仕事へのモチベーションにつなげる。「堅苦しさを感じず、『いいな』と思える環境づくり」に余念がない。

 

《ネイラー・Hutson TF1700とSGTガレージ》

 

 「おしゃれな警備会社」のイメージを徹底する同社では警備服やヘルメットも一新。社員一人一人採寸したユニホームに身を包み、ロゴも刷新。ロゴワッペンも業者に発注して、取り付けまで行うことで社員に「かっこ良く決まった警備員」になってもらうことにこだわった。「魅せる仕事」も徹底したいと旗振りの指導にも余念がない。「しっかりと旗をなびかせ、ドライバーに見えやすく、そして華麗に」と細かい所作まで抜かりない。田崎社長は「旗の振り方で『ユニバーサルガードが交通整理してた』と言われることもある」と話す。

 

《ユニフォームはJAWINのカタログでも取り上げられた》

 

 「本当に心から長崎の明るい未来を考え行動することが大切」と社会貢献活動にも積極的に取り組む同社。社員の自発的な活動も後押ししている。イベントの交通警備がきっかけで三重地区の海岸清掃を行うルナステラの店主・里見はるかさんと出会った社員の瀧本一孝さんは11月18日、合同で海岸清掃イベントを企画。田崎社長も参加して共に汗を流した。

 

《海岸清掃の告知》

 

 「『こんなかっこいい大人が長崎にいる』『長崎でも楽しめることがある』ということを子どもたちに伝えることが長崎の未来につながる。人口流出が止まらないと言われる長崎だが、その中で会社や警備の仕事に興味を持ってくれる子どもが出てくれば、将来、『長崎で働きたい』『長崎で暮らしたい』という若者が増えることにもつながる」と強い信念を持つ田崎さん。「誰かを目標にしているわけではなく、自らの目指すところを常にアップデートしながら環境づくり、そして長崎の未来のためにできることを模索し、実践していきたい」と意気込む。

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