長崎港・おくんち広場で五島産「超小型電気自動車」体験 

「ほろ」をかぶせた状態を披露する真崎社長

「ほろ」をかぶせた状態を披露する真崎社長

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 5月8日から「五島列島まつり」を開催している長崎港・おくんち広場(長崎市元船町)で現在、五島市の真崎商店らのグループが開発した「超小型電気自動車」の試乗体験に人気が集まっている。

座席下はバッテリーなどの格納場所

 土木建築資材業を手掛ける「真崎商店」(五島市吉久木町)の真崎一郎社長(60)をリーダーとするプロジェクトチームでは、島内での利用を考慮し2人乗りの超小型トラックを開発。「デザインには特にこだわった」との言葉通り、丸みを帯びた運転席の形状が「ひよこ」に似ていることから「piyo(ピヨ)」と名付けた。

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 真崎さんは「自分は砂利やセメント以外のことは全くの素人。知識がないかわり、先入観もなかったことがよかったのかもしれない。それぞれの分野の専門家の人たちからの知恵と技術の提供が完成に結びついた。心から感謝している」とほほ笑む。

 2001年から五島市で始まった「アイアンマンジャパントライアスロン五島長崎大会」を誘致した発起人でもある真崎さんは「五島の子どもたちにはどんな分野にしろ目の前で本物を見る機会がほとんどない。世界中から集まった超一流のアスリートたちが限界まで戦う姿を目の当たりにすれば、未来を担う子どもたちへの最高の教育機会になる」と当時の市長や商工会幹部などに大会のビデオを見せながら説得して回ったという。

 同大会は「3.8キロの水泳競技」「180.2キロの自転車競技」「フルマラソン競技」全てを制限時間15時間以内で完走するもの。毎年4月~5月に五島市福江島で行われ、出場資格を得るには過去3年間で総合距離51.5キロ以上のトライアスロン競技大会で完走した実績を持つか、日本トライアスロン連合加盟競技団体の登録選手であることが前提条件。その後、主催者の選考によって出場者が選ばれることになっており、トライアスロン競技の中でも最も過酷な耐久レースという。毎年10月に米・ハワイ島で開催される「アイアンマントライアスロンワールドチャンピオンシップ」の出場権を賭けた日本国内唯一の予選会のため、国内外の有力選手が多数五島市に集まったが、2009年の大会を最後に五島長崎大会は終了。現在は「五島長崎国際トライアスロン大会」として毎年開催している。

 電気自動車導入を積極的に進める五島市に住む真崎さんは、国土交通省が進める「超小型モビリティ」事業を知り、「これなら島に電気自動車メーカーが作れる。今まで培った技術を応用すれば、若者だけでなく高齢者でも地場産業の担い手になれる」と直感。電気自動車に関する予備知識を全く持っていないため、各分野の専門家を地道に説得しながらプロジェクトチームを少しずつ築き上げていったという。

 「細かいことにこだわることも大事だが、全体を見渡すことの大切さを痛感させられる。作り手が泣きたくなるような流線形デザインにこだわったのも、売れるかどうかはデザインで決まるから絶対に妥協できなかった。結果は優秀な専門家の協力で予想を超える見事な出来栄え。外国製車両をベースに使った最初の大失敗も全く無駄ではなかった。専門家の人たちに無理を言って本当に申し訳ないが、無理を言わなかったら『piyo』は完成しなかっただろう」とも。

 後部に取り付けられた箱型の荷台は、漁船に使用されているFRP(繊維強化プラスチック)技術を採用。「新造船の受注が激減した島の造船所に新たな仕事をもたらす可能性がある」と真崎さん。荷台に取り付ける「ほろ」の製造を依頼した専門家には当初、「それでは無理」と断られたが、完成した試作車には防水式のマジックテープを採用したり、素人でも簡単に取り付けや取り外しができるよう細かい工夫が施されたりするなど、専門家の知恵が随所に生かされている。

 試作車には五島市からナンバープレートが交付されているが、現時点では「原動機付き自転車」と同等扱いになるため、公道上での乗車定員は1人。将来、超小型モビリティを国が自動車の一種として正式に制度化した場合は2人になる。試作車に搭載したバッテリーでは、3時間充電で約30キロの走行が可能という。真崎商店には試作車を見学するため、東京大学など全国各地の大学関係者や自治体関係者、企業関係者などが頻繁に訪れている。

 試乗した男性は「動きがスムーズで楽しかった。売り出された時の価格次第ではぜひ買いたい」と話す。真崎さんは「試作車なので持ち上げ式のバーだが、販売時にはドアを取り付ける予定。可能な限り手ごろな価格で販売したい。発注者のニーズに合わせた受注生産にも対応できる」と意気込む。

 開催時間は9日10時~19時、10日10時~18時。荒天中止。