長崎の医療・介護関係者や食品関係者で構成する「ゆめカステラプロジェクト」が現在、食べ物を上手に飲み込めない人でも食べやすいカステラの研究開発を進めている。
「ゆめカステラプロジェクト」が始まったきっかけは、今年1月に長崎市内で開かれた「2025年問題」を話し合う医療・介護関係者のグループワークで、「嚥下(えんげ)に悪い食べ物は何か」という質問の答が「カステラ」だったこと。2025年問題とは、約800万人いるという団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が75歳に達して後期高齢者となり、日本が超高齢化時代に突入する問題。嚥下とは食物を飲み下すこと。口腔内の食物塊を胃に送り込む運動で、随意的な動きと不随意的な動きからなる(出典=ブリタニカ国際大百科事典)。
「嚥下に悪い食べ物の筆頭がカステラというのは悲しい。長崎人として何とかしなければならない」と長崎大学病院特殊歯科総合治療部の歯学博士・三串伸哉さんがグループワーク終了後、参加者に呼び掛けて始めた会合が同プロジェクトに発展した。
当初は医療や介護従事者だけで意見交換をしていたが、その意見を基準に栄養士が作る試作品では医療や介護の視点に偏り過ぎるため「お菓子の専門家にも参加してもらおう」と、口コミやソーシャルメディアなどを使って呼び掛けたところ、パティシエや食品メーカー関係者、カステラ職人など、多くの食品関係者も参加するようになった。
メンバーたちは長崎市内の貸し会議室で11月9日、8回目となる会合を開き、食品メーカーが手掛けた試作品を全員で試食。「味は普通かな」「意外とおいしい」など、アンケート用紙に感想を書きながら活発な意見交換を行った。友人に誘われて参加した介護福祉士の早野明(さやか)さんは「いろいろな嚥下レベルの人がいるが、介護を受ける人と家族が一緒に楽しく食べられる商品にしたい。デイケアやデイサービスで試食してもらうのが楽しみ」と話す。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士でもある三串さんは「毎回サークルのような感じでさまざまな方に参加してもらっている。医療関係者だけだと縦の関係になりがちだが、横に広がっていく感じが楽しい。カステラの魅力に集まってくるのだろう」と笑顔を見せる。