軍艦島上陸ツアーなどを企画するユニバーサルワーカーズ(長崎市南山手町)が長崎県内で放映していたテレビCM「軍艦島コンシェルジュ池島ツアー兄弟喧嘩編」で、「2019 ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」の地域ファイナリストを受賞した。
ガンショーくんルーム2に展示されている軍艦島最盛期の頃のレトロアイテム
同賞は、1961(昭和36)年より開催されてきたテレビ、ラジオCMの質的向上を目的とする広告賞「ACC CM FESTIVAL」が2017(平成29)年からその枠を大きく拡げ、あらゆる領域におけるクリエーティブを対象としたアワードとしてリニューアルしたもの。「ALL Japan Confederation of Creativity(日本の産業を、クリエーティビティでアップデートすること)」を目的に設立されたACCが毎年開催している。
ガンショーくんは、長崎県の世界遺産、軍艦島のマスコットキャラクターとして、2017年7月12日に「現実世界に誕生」したゆるキャラで、同社の軍艦島へのクルーズ船を運航する「軍艦島コンシェルジュ」と、「軍艦島デジタルミュージアム」が制作したもの。CMはこれまでも軍艦島の元島民で同社ガイドを務める木下稔さんの少年時代をモチーフにしたキャラクター「みのる」や、父の「みのる父」などが登場し、木下さんの軍艦島でのエピソードを取り入れたさまざまなストーリーが制作されていた。
木下さんは現在の廃墟となった軍艦島を見て「鉄筋コンクリートの建物が、正直ここまで朽ちるのか」という思いだったと話し、かつて父の職場だった映画館「昭和館」を見ると「幼少期に父からもらった愛情が思い起こされ、懐かしさを感じる」と当時を振り返る。
受賞した「池島ツアー兄弟喧嘩編」は2017年から新たに設定した「世界文化遺産の軍艦島周遊クルーズ&池島ウォーク・坑内見学 ワンデーツアー」(現在は運休中)の開始に合わせて制作したCMの一つで、2018(平成30)年9月16日から10月31日にかけて放映されていたもの。
池島は軍艦島の北約30キロに浮かび、1974(昭和49)年に閉山した軍艦島から受け継ぐようなかたちで1959(昭和34)年から2002(平成14)年まで炭鉱として操業していたことから「第2の軍艦島」とも呼ばれ、閉山後も研修施設などとして利用されていたことから現在でも炭鉱の設備が残る。軍艦島は埋め立てでできた島で、現在は無人島。池島は島そのものの天然の状態で使われている有人島であることから、CMでは池島をキャラクター化したガンショーくんの弟「池島ちゃん」がガンショーくんを茶化してけんかするというストーリーとなっている。
CMは現在も新たなストーリーが制作されており、木下さんは島での思い出をCMのストーリーとして提供することについて「軍艦島は自分の故郷であり、永遠に残る場所になってほしい」と笑顔を見せる。