障がいをもった子どもたちに向けた『ダイバーシティ学習プロジェクト』のクラウドファンディングの募集が1月8日、始まった。
長崎市内で作業療法士として働きながら子どもの英語の先生やラジオのアシスタントパーソナリティー、国際交流コミュニティーの代表としてパラレルワークをしている脇葵依さんが立ち上げた同プロジェクト。障がいを持った子どもたちが英語をコミュニケーション手段として使うことの大切さや楽しさを、オンラインを通じて体験し、全世界と交流できるようになるための総合学習支援を行う「ダイバーシティ学習プラットフォーム」を目指す。
脇さんは学生時代にカンボジアの孤児院を訪れたことがきっかけで「子どもたちに関わる仕事がしたい」と小児作業療法士を志し、総合病院に就職。「障がいを持つ子どもたちには自分ができないことに悲観的な傾向があり、自分の殻に閉じこもって自信を無くすことが多い」という脇さん。生活背景や考え方、価値観を理解し、個性を引き出しながらリハビリや治療を行うことに限界を感じ、海外ではどのように障がいを捉えてサポートしていくのかを学びたいと退職を決意。2015(平成27)年にオーストラリアで保育士の免許を取得し現地の保育園に勤務。その後、世界22カ国を巡り「多様性」と「教育」の相関関係を学んだ。
2017(平成29)年に帰国した脇さんは「置かれた環境に左右されないグローバルな社会を身近な場所から実現したい」と20カ国200人が集う国際交流コミュニティーを立ち上げ、国際交流や異文化体験など年間約1000人を動員した。夏休みなどにハンディキャップのある子どもたちに英会話や芸術のワークショップも実施。現在のパラレルワークという生き方にたどり着いた。
障がいを持つ子どもにとっては指導法も確立されておらず、親の負担も大きいことから習い事をすることに大きな壁があることを知った脇さんは「特別支援として個別の対応が求められている子どもの支援が行き届いていない現状があると感じた」という。自身の海外経験と国際色豊かなネットワーク、保育士、作業療法士としてのキャリアを生かし、国やハンディを超えて多様な「個」を尊重し合いながら自分らしく学べる場を作りたいとプロジェクトを発案。「世界とつながるコミュニティー」を継続し、ダイバーシティにも配慮した学習システムを開発、実践することで世界教育に触れる場を構築。思考力・表現力や、異文化に対する理解や自己肯定感を育くむ支援行うことで未来に対する自分の可能性や能力を信じて伸ばすことを目指す。
生まれ育った長崎を知ってほしいという思いからクラウドファンディングの返礼品にもプロジェクトに賛同する県内企業の商品や県内産の農産物などと共に、交流のある野母崎の永遠の非公認キャラクター「水仙マン」の協力を得て野母崎を巡る体験も用意した。
脇さんは「発達障がいなどを抱えた子どもの数が増加傾向にある中、多くの才能を持っていても『問題児』と扱われてしまう。障がいを持つ子どもたちが悲観的な思考に陥りやすく、世界の文化や価値を学ぶ機会が限られてしまう現状を変えたい」と話し、「『人との関わり』や『教育』という豊かに日々成長できる環境の基盤を作り出すことで日本や世界をつなぐ教育活動の第一歩にしたい」と意気込む。
クラウドファンディングは3月1日まで。2月にホームページを公開し、3月に体験モニターレッスンを開始。4月に1学期授業の開講を予定する。