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長与川で自然を体感してもらう冒険イベント 小中学生9人が参加

長与川の源流で記念撮影する参加者

長与川の源流で記念撮影する参加者

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 専門家と共に小中学生らに自然を体感してもらおうという冒険イベント「長与川の源流をめざそう!」がこどもの日の5月5日、長与川(長与町)で行われた。

長与川の生き物について解説する中原さん

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 長崎大学職員のデミー博士こと出水享さんが中学生の出水琉さんと陣野真希さん、学童指導員の佐藤琢磨さんと企画した同イベント。出水さんはインフラ維持管理の技術者養成に携わりながら子どもに向けて、土木の仕事や防災の役割を知ってもらうイベントを開催してきた。

 今回のイベントは、長与町と諫早市の境にある標高451メートルの琴ノ尾岳から長与町の中心部を通って大村湾に流れ込む長与川の源流から河口までを歩きながら動植物に触れてもらうとともに、ハザードマップに示されている危険な場所や1982(昭和57)年に発生した長崎大水害の記録や痕跡を通じて子どもたちに防災を学んでもらいたいと開催した。

 当日は、土木や防災、生物、環境などに詳しい専門家4人が長与町と島原市から参加した小中学生9人と約10キロメートルのコースを巡った。9時に長与駅に集合した参加者は長与川沿いに上流を目指した。長与駅周辺の中流域では川に降りるための通路があることから、参加者らは川の中を濡れながら歩き、エビやカニなど水辺の生き物に触れた。長崎県の環境アドバイザーを務める中原泰彦さんが網を使ってオイカワやカワムツを捕まえ、周辺に生息する生き物について解説した。

 参加した9人は川でごみ拾いも行った。空き缶やビニール袋といった生活ごみをはじめ農業資材や釣具なども見つかった。長崎大水害の痕跡も残っていることから、元国土交通省職員の山村健志さんが長崎大水害時の長与の被災の様子やハザードマップについて説明した。

 参加者らが目指した上流の長与ダムには12時ごろ到着。同ダムは長崎県が管理するダム35カ所の一つで1973(昭和48)年に防災ダムとして着工された重力式コンクリートダム。建設中に計画変更が行われ、1985(昭和60)年に多目的ダムとして完成している。

 同ダムでは長崎県建設部の岩永正幸さんと下釜悠輔さんが9人を出迎え、周辺を歩きながら解説。管理事務所で模型を使ってダムが洪水から街を守る仕組みや利水の役割などについて説明した。長与ダムは小規模ダムの合理的工法としてコンクリートポンプ工法が取り入れられていることなどにも触れた。こどもの日にちなみダム堤体の天端ではこいのぼりを掲げて楽しんだ。

 昼食を取った参加者は13時30分に再び出発。琴ノ尾岳中腹にある長与川の源流を目指した。みかん畑やのどかな田園風景が広がる長与ダムから上流域では川に大きな岩が増え、生息する生物も変化することから中原さんとともに川に住む生物を探しては解説してもらいながら足を進めた。中原さんは護岸で生物の多様性が失われることや川に住む生物が水質のバロメーターになることなどを説明した。

 途中、扇塚公園から琴ノ尾岳に登る遊歩道を進むと路面が濡れた場所にたどり着き、「源流が近いのでは」という声が上がった。さらに奥へと登り、15時過ぎに長与川の源流に到着した。

 源流で記念撮影を行った参加者は扇塚公園に戻り、長与港へ抜ける登山路を下山。16時ごろ河口がある長与港に到着した。

 工事現場や砂防ダムなどでイベントを行ってきた出水さんは「今回は自然に触れてもらうことを絡めた初のイベントになった。土木工事が行われる裏側ではダムを作るために山を切り開き、護岸を整備するなど少なからず環境への負担がある。子どもたちにあえて負の側面も知ってもらうことが、より深く考えるきっかけになれば。土木だけでなく生物や環境の専門家も交えることで新しい切り口でのイベントにつながる今回のようなイベントを今後も企画できれば」と話す。

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