研修の一環で来日しているカンボジアの教員らが9月10日、高浜海水浴場(長崎市高浜町)で行われた清掃活動に参加した。
教員らは、教員育成支援に取り組む一般社団法人教育支援センターキズナ(城山台1)が手がける保健教員育成を目指す研修プログラムの一環で来日。日本財団(東京都港区)は内戦終了後からカンボジアで小学校建設支援を行い、100校を設立。2004(平成16)年から教育人材育成を目指したソフト面の支援に注力してきた。同団体はパートナーとして人材育成に取り組んできた。
現地で保健を指導する教員に「日本の教育環境を実際に見てもらいたい」と研修を企画した同法人代表理事の高田忠典さんによると、「カンボジアでは日本の学校にある保健室に相当するものがなく、救急時に適切な研修を受けた教員もほとんどいない。保健体育に当たる授業科目にも専門教員が割り当てられていないことから教員の育成が行き届いていない」という。研修にはカンボジア南西端のタイと国境を接するコッコン州から15人が参加していた。
「保健を学ぶ教員に公衆衛生などの観点から日本のごみの考え方や環境問題についても知ってほしい」と海ごみ清掃を企画する市民団体「team長崎シー・クリーン」に呼びかけ、清掃活動への参加を決めた。
清掃前に高浜地区公民館(高浜町)でごみ問題について学ぶ場を設けた。日本財団の「海と日本プロジェクト」の一環で大村湾の環境問題に取り組む「大村湾ワンダーベイプロジェクト」のプロデューサー・高田雄生さんが日本の海ごみ問題について説明。「現在、世界の海に漂う海洋ごみの量は総計約1億5000万トンあり、毎年800万トンずつ増えている」と説明した高田さん。「ごみの多くはプラスチックで2050年には魚よりプラスチックごみの量が多い海になることが予測されている」と説明した。
カンボジアのマイマイさんがチョロイスワイの中学校周辺で月に一度、生徒や地域の住民らとごみを撤去する活動に取り組んでいることなどを紹介。カンボジアの都市圏ではごみを収集して郊外に埋めたてる仕組みが確立されているが、田舎ではごみが至る所に捨てられているという現状にも触れた。
高浜海水浴場に移動した参加者は長崎中央ロータリークラブや長崎モトクルメンバーズの呼びかけで集まったメンバーらと合流。合わせて100人以上で1時間ほどかけて海水浴場や周辺の清掃活動を行った。
清掃後は9月23日開催の高浜八幡神社秋季大祭に向け、相撲神事の準備で土俵起こしをしていた高浜相撲協会のメンバーから祭りの歴史について説明を受けた。祭は200年以上続く地域の伝統行事になっている。教員らもカンボジアの伝統的な踊りを披露し、全員で踊って交流を深める一幕もあった。
高田さんは「長崎は日本の西洋医学伝来の地であることから、今年5月にはG7保健大臣会合が行われるなど国際保健分野でも注目を集めた場所として研修に来てもらった。ごみ問題を含め未来を託す子どもたちに日本で得た知識や経験を伝え、教育として保健を普及させてもらいたい」と期待を込める。