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長崎県美術館で永見コレクション里帰り展 近代長崎の美術文化伝える

テープカットの様子

テープカットの様子

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 大正期の長崎で名だたる芸術家と親交を持ち、晩年は長崎の「伝道者」として活動した永見徳太郎に焦点を当てた企画展「浪漫(ロマン)の光芒(こうぼう) 永見徳太郎と長崎の近代」が10月14日から、長崎県美術館(長崎市出島町)で始まる。

永見徳太郎編著「長崎版画集」1926年 など

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 金融業や貿易業で財産を築き、第十八国立銀行(現・十八親和銀行)の創業にも携わった永見家に1890(明治23)年、四男として生まれ、16歳で6代目当主・徳太郎となった永見徳太郎。実業家として活躍しながら、芸術分野に情熱を注ぎ、外国人の様子や外国をテーマにした美術作品を「南蛮美術」と捉えて幅広いジャンルの作品を収集。1920年代後半頃には日本屈指の南蛮美術コレクターとして知られていた。江戸中期から長崎で作られた「長崎版画」を集めコレクションによる展覧会を開催することもあった。

 長崎市銅座エリアに家を構え、しばしば馬に乗って街中を散策する姿から「銅座の殿様」の異名を持つ徳太郎。学生の頃から演劇が好きで、戯曲を手がける劇作家や画家として作家名を「夏汀(かてい)」と名乗り、創作活動に励んだ。あえてぼんやりさせた雰囲気に仕上げる「朦朧(もうろう)写真」にも取り組み、1913(大正2)年に写真集「夏汀画集」を出版するなど多彩な制作活動を展開した。

 芥川龍之介や斎藤茂吉、南薫造など当時の文学者や画家などと広く親交があった徳太郎。竹久夢二が長崎を訪れた際には自宅を宿として提供するだけでなく、題材探しに同行してサポートするなど手厚くもてなしている。

 徳太郎は1926(昭和元)年、一家で東京へ移住。文筆活動が盛んになり、長崎文化に特化した「長崎の美術史」などの出版物を手がけている。

 展覧会では徳太郎の側面を「あつめるー南蛮美術の大コレクター」「つくる-アーティスト・永見夏汀」「つなげる-芸術家たちとの交流」の3つのテーマに分けて紹介。プロローグ「銅座の殿様-永見徳太郎」とエピローグ「かたる-長崎の伝道者」として実業家としての側面や晩年の南蛮美術や長崎の文化・歴史に関する論考活動にもフォーカスしている。

 展覧会を前に13日に行われたオープニングセレモニーであいさつした長崎県文化観光国際部の前田謙介部長は「永見コレクションが100年ぶりの長崎に里帰りを果たした貴重な展覧会。近代長崎の芸術文化の一幕を伝えられるのでは」と期待を込める。

 長崎県美術館によると前期・中期・後期と分かれており、作品の入れ替えで竹久夢二の「長崎十二景」「女十題」などは11月5日までの展示となることから、「見たい作品がある場合は出品リストをチェックして来館してもらえれば」と呼びかける。

 開館時間は10時~20時。観覧料は、一般=1,200円、大学生・70歳以上=1,000円、高校生以下無料。来年1月8日まで(10月23日、11月6日・13日・27日、12月11日・25日・29日~2024年1月1日は休室日)。

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