大学生がプロの映像制作会社の指導の下で長崎県内各地を旅して感じた魅力を映像作品として制作する「撮り旅 in NAGASAKI」が9月から10月にかけて開催され、10月9日、完成した映像の試写会が行われた。
若者と長崎をつなぐ活動を行ってきた「縁JOYプロジェクト」と長崎県が主催した同イベントは、広告映像制作を中心とした映像プロダクション「AOI Pro.」(東京都中央区)が「地域の魅力を映像にしよう!」をテーマに2022年に立ち上げたプロジェクトの一環。同プロジェクトでは地域の学生らが県内各地を旅し、同社の指導を受けながら、それぞれが感じた地域の魅力を撮影し、作品を通して地域の魅力発信に取り組んでいる。
9月15日に長崎県庁で行われたキックオフミーティングには選考で選ばれた学生が集まり、AOI Pro.の担当者らからイベントの趣旨や映像制作の目標などについて説明を受けた。3人1組のグループを組み、それぞれのグループに同社の指導スタッフがつくかたちで映像制作を始めた。
オンラインも活用しながらグループごとにミーティングを重ね、撮影プランなどを考えた参加者。10月7日に県庁に集合し、映像の構成や撮影許可などの最終確認を行うとともに、撮影計画を作成して翌日の撮影に臨んだ。
あいにくの雨模様の中で行うことになった撮影ではグループごとに集合してロケ地に出発。長崎市内中心部のカフェ巡りをテーマに撮影を行ったグループはメンバー全員が映像制作の経験がないことから、スマホ撮影用のジンバルを用意。初めてのジンバル撮影に戸惑いながらも指導スタッフのアドバイスを受けながらグラバー園周辺や市内中心部を撮影して回った。
9日、参加者は再び県庁に集まって編集作業を行った。編集は実際にプロの映像制作で使われているソフトを使い、撮影した映像を作品に仕上げた。18時過ぎから参加者全員で6グループの作品の試写を行った。試写会ではグループごとに制作した映像の企画や目的、見どころなどを説明後に上映。指導スタッフの講評を織り交ぜながらイベントを振り返った。
学生からは短期間の制作だったことや撮影当日が雨だったことから大変だったものの、「楽しくやりがいがあった」「映像を撮る楽しさを知ることができた」などの声が聞かれた。映像経験のある学生からも「誰かと関わり合いながら作ることで、いろいろなアイデアを出し合って自分自身の感受性も豊かになったのでは。とてもいい経験をさせてもらえた」という感想も。
「同じ題材やテーマを撮影しても撮る人によって表現が変わることが映像の面白さ」と話すAOI Pro.の鳥居碧さん。各グループを指導したスタッフからは「雨の長崎の魅力が伝わってきた」「普段切り取らないような映像の撮り方もあり、短い時間のなかでやり切っているのはすごい」などの感想もあった。鳥居さんは「学生にも地域の魅力を感じながら映像制作に取り組んでもらいたいという思いもある。雨の中でも楽しみながら旅して回ってもらえたのがうれしかった」と笑顔を見せる。
長崎県文化振興課の山浦義次さんは「行ったことある地域が多かったが、雨の色合いや切り取る角度が新鮮だった。県として初めてアート系の育成事業だったが、大きな手応えがあった。学生にも一つのきっかけとして次のステップに進んでもられば」と話す。
縁JOYプロジェクト代表の柿田紀子さんは「これまで触れることがなかったプロの映像制作を体験することでいろいろな可能性が広がることを体感した。今後の取り組みの中でも学生と何かを作っていければ」と期待を込める。