長崎にゆかりのある魚類図鑑「日本西部及び南部魚類図譜(通称=グラバー図譜)」の魚図を用いた卓上カレンダーが11月17日、発売される。
グラバー図譜はスコットランド人貿易商トーマス・グラバーの次男で水産学者の倉場富三郎(トーマス・アルバート・グラバー)が編さん。明治末から昭和初期にかけて行われた同図譜の編さんには倉場富三郎が雇った5人の地元画家が長崎で水揚げされた魚を形態や色彩から、うろこの数に至るまで正確に描写。多くの魚方言(地方名)も記されている。全32集806図に及ぶ図譜は倉場富三郎の死後、日本銀行総裁などを務め、漁業史などにも精通する渋沢敬三の手に渡っていた。長崎大学水産学部の設立がきっかけとなり1950(昭和25)年に同大に寄贈された経緯がある。
カレンダーは同大水産学部の山口敦子教授が、同大に所蔵されているグラバー図譜を一般に手にしてもらうことで広く知ってもらうと同時に「海の環境を維持し、これらの魚が100年後も食卓を彩っていてほしい」と3年前に手作りで製作。大きな反響があったことから一昨年は「長崎のうんまい魚めぐり」、昨年は「長崎のきれか魚を食べてみんね」をテーマに、長崎の食文化に根付いた魚種にスポットを当てた。
今年は趣を変えてビジュアルに着目し、「スジの通った魚たち」をテーマに、しま模様が特徴的な魚種をピックアップしたという。A5サイズの卓上サイズで、グラバー図譜の魚図と共に山口教授らが撮った標本写真と魚の特徴などを長崎の食文化と絡めた解説を添える。使用後ははがきとして利用できる。B3の壁掛けサイズも少数ながら用意する。
「フグの一種『キタマクラ』は図譜には産卵期のわずかな期間のみ見ることができる婚姻色(こんいんしょく)で描かれており、入稿前まで標本写真のために魚を手に入れようと奔走したが見つからなかった。違う魚種にすることも考えたが思い入れもあり、採用を決めた」と山口教授は振り返る。
価格は、卓上サイズ=1,200円、B3サイズ=3,000円。B3サイズは12月初旬に一部販売店のみで扱う予定。同大生協のほか石丸文行堂(浜町)や長崎街道かもめ市場(尾上町)内の土産店などでも販売する。