量販店における鮮魚直売についての産学官ワークショップが1月26日、長崎大学(長崎市文教町)で行われた。
水産物は健康的な食品として世界的にも注目される反面、家庭内での調理が敬遠され国内消費が減少を続けているという課題がある。「地域の人に魚を食べてもらうことが水産業の発展につながるのでは」と、長崎県内を中心にスーパー44店舗を展開するエレナ(佐世保市)が野母崎三和漁協(脇岬町)と連携して店内に漁業者の直売コーナー開設に向け準備を進めることを決めた。
長崎大学では水産業が盛んな長崎県で持続可能な養殖に取り組むと同時に水産業再生と地域活性化を目指し、産学官連携で取り組む「ながさきBLUEエコノミー」が昨年2月に地域課題の解決のためのプロジェクトとして国から採択されていた。直売所の設置は同プロジェクトの一環として産学官連携で進め、長崎大学水産学部に今年度新設した「海洋未来創生コース」の学生が企画段階から参加。水産を学ぶ学生が現場の人たちと協働しながら、課題解決のための新しい仕組み作りに向けて挑戦していた。
ワークショップには長崎市の水産関係部署の職員や野母崎三和漁業協同組合の岡部聖二代表理事組合長、エレナの中村義昭専務など行政や企業関係者が出席。長崎大学からは水産学部の清田雅史教授と長崎大学の学生約20人が参加した。清田教授は始めに「伊那グリーンファーム」(長野県伊那市)の成功事例を紹介するとともに目的や理念を明確にする重要性を説明。自己紹介の後、グループに別れて生産者や販売者、消費者、行政、それぞれの立場から「解決できるといいと思うこと」をテーマに意見交換を行った。
「四季それぞれにおいしい魚がある長崎。一方で旬の魚が分かりにくいことから『さしみシティ』としてより絞った訴求を目指した取り組みに切り替えた」と話す市職員。漁協関係者は未利用魚や「売れることを漁師に伝えないと魚を持ち帰らない」「漁協の直売所では決まった客しか訪れず、販路拡大につながっていない」という現場の実情が話題になった。学生からは「スーパーで流通する魚は早くても2日目のもの。直売所を設けることで新鮮さを付加価値にできないか」などの意見のほか、水産を学ぶ学生からは「大学では販売側目線の話はあまり聞けないので、そのような声も聞きながら深く学びたい」という感想も飛び出した。
長崎市水産振興課の岡春香さんによるとワークショップは来月も開催を予定し、「直売所開設に向けて取り組みを進めていきたい」という。