初盆を迎えた故人の霊を船に乗せて極楽浄土へ送る行事「精霊流し」が8月15日夕方から、長崎市で行われた。
故人をしのぶ装飾を施したデザインなど想いを込めた精霊船を家族や親戚・友人らが、市内各所から流し場まで爆竹を鳴らしながら運んだ。時折、強い雨が降る悪天候となったが、精霊流しのコースとなっている長崎県庁坂周辺には、多くの見物客が訪れた。
今年は、長崎市民有志により東日本大震災犠牲者の魂を送る精霊船「東北丸」が製作された。実行委員長は市内でイベント会社を経営する佐々木俊美さん。7月末ごろに知人ら8人へ呼び掛けて協力者を募った。
精霊船に取り付けたちょうちんには長崎の原爆被爆者からのメッセージが書かれ、「みよし」と呼ばれるへさきの回りには実行委員や一般の人が被災地に向けて書いた短冊数百枚が飾られた。田上富久長崎市長からは「がんばろう!東北 おいたちも頑張っけん!」などのメッセージをもらい船に取り付けた。
当日、福島から長崎の実家に里帰りしているという子ども連れの女性から「船に乗せてほしい」とコモを預かった。中身は福島から持ってきた野菜や果物だという。長崎市民の想いと被災地の想いを乗せた船は、賛同者約100人の手により流し場である長崎魚市場跡地まで引かれた。
「今回の精霊船は協力者の力がなければ成しえなかったこと。皆さんの温かい気持ちと支援があれば、被災地の復興も必ずかなう。長い戦いになると思うが、気持ちを込めてこれからも一緒に頑張りたい。今年初盆となる犠牲者の方もいるが、来年が初盆となる方もいるだろう。賛同者が集まれば来年も船を出したい」と佐々木さんは言葉に力を込める。