あたご自動車学校(長崎市星取1)の公式フェイスブックページが9月、「いいね」の数が3000を突破。自動車学校のフェイスブックページとしては獲得数全国1位となった。
同校は1961(昭和36)年2月に開業した愛宕自動車練習所が前身。翌年、指定自動車教習所となり「愛宕自動車専門学校」と改称した。1965年、現在地に土地を取得し翌年4月に教習コースが完成。1976(昭和51)年、初心運転者教育の基本理念「互譲(ごじょう)運転教育」を掲げる。互譲とは自分が譲り合うゆとりの心を先に持つことで、相手にもその心が芽生えて互いに譲り合えるという安全運転理念。
1977(昭和52)年には「愛宕自動車学校」への改称と「SDカード制度」を考案。「SDカード制度」は同校卒業生が1年間無事故無違反で安全運転を達成した時、その証明としてカードを発行する制度。この制度は現在、全国に普及している。翌年、もっとも事故や違反が多発するといわれる卒業3~4カ月後を目安に、卒業生の安全運転度を無料でチェックする「再会教室」をスタート。「自宅近くの路地から大通りに出るところが苦手」という事例では、卒業生の自宅近くまで指導員が出向き、現場で安全運転指導することもあるという。
同校学生部次長で指導員の木口義昭さんは「あたりまえ体操」で知られるお笑いユニット「cowcow」の多田健二さんに似ていると在校生の間で評判になっていた。多田さんのトレードマーク「伊勢丹の紙袋柄のスーツ」を木口さんが着るようになってから人気がさらに上昇。同校では1年半ほど前にフェイスブックページやユーチューブチャンネルを立ち上げ、積極的な情報発信に務めている。「いいね」の数は9月半ばに3000を突破。職員が出演するパロディー動画などの総再生回数も2万7000回を超えている。
木口さんは、「私自身はスマホやインターネットは苦手なので分からないが、動画を見た高校生や大学生が『カウカウ先生!』と初対面からいきなりフレンドリーに声をかけてくる」と笑顔を見せる。同校では創業当時から在校生や卒業生との「つながり」に力を入れており、感謝祭を開いたり、地元の高校を集めてバレーボール大会を開いたり、さまざまな地元のイベントに参加したりしている。
イベント時には指導員がバルーンアートを実演したり、模擬店を出したりするなど全員参加で盛り上げ、在校生や卒業生が自然と集まって行列になるという。長崎水辺の森公園で9月28日に行われた「長崎のお笑い名人」を決めるイベント「N-1グランプリ」では、木口さんらのチームが「パイ投げ」ネタで出場。予選2位となり本戦には進めなかったが、会場に集まった在校生や卒業生らを大いに楽しませた。
同校に勤務する職員は、1995(平成7)年に制定された「互譲三訓の記」を毎日唱和している。一字一句間違えずに暗唱できなければ指導員になれないという特別ルールがあり、木口さんは同校の姿勢に感動して指導員になったという。
「卒業した人の子どもさんが親の勧めで入校してくることも少なくない。互譲精神が世代を超えて伝わっているからだろう」と話す。互譲については「もし頑として道を譲らなかったら、譲ってもらえなかった人はイライラする。イライラしている人は『絶対に譲るものか』と譲らなくなるし、それが次々に伝染する悪循環に陥る。ところが自分が急いでいても人に道を譲れば、譲られた人は心に余裕が持てる。その人も別の人に道を譲るかもしれないし、少なくとも笑顔になれる」と説明する。
同校には障がい者専用教習車が2台用意されており、障がい者が運転免許を取得して安全運転で社会参加することにも力を入れている。「6年前の卒業生が重い障がいを乗り越えて安全運転を続けている。先日は遠くからわざわざイベントに運転して来てくれた。彼が『運転できることがうれしい』と見せてくれる笑顔がたまらなくうれしい」とも。木口さんは「互いに譲る心を持てば、人生そのものが変わる」と力を込める。