オランダの写真家とドキュメンタリー制作者、長崎でトークセッション

写真家カリー・マルケリンクさん(左)とドキュメンタリー映像制作者の山本正興さん(右)

写真家カリー・マルケリンクさん(左)とドキュメンタリー映像制作者の山本正興さん(右)

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 長崎のカフェ「豆ちゃん」(長崎市東古川町)で4月24日、オランダの写真家カリー・マルケリンクさんとテレビ長崎取締役でドキュメンタリー番組制作者の山本正興さんがトークセッションを行った。

写真集「European Eyes on Japan」(左)と「Memory Traces」(右)

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 当日集まった45人の参加者は、2人の会話に熱心に耳を傾けた。

 東日本大震災で起こった原発事故をきっかけに同店代表・吉田隆さんと東京のキュレーター菊田樹子さんが写真展を企画し、初日に同イベントを開催。トークセッションでは、「負の記憶を持つ風景写真」を撮影するマルケリンクさんがアーティストとして取り組む姿勢や写真集「European Eyes on Japan」「Memory Traces」を核にトークを展開した。  

 そこに暮らす人の意志とは関係なく悲惨な歴史を持つ土地を10余年かけて撮影してきたマルケリンクさん。「経済も風景も人間が形作っている。人間が作り上げた風景の中にある『歴史』『情報』からなる『傷跡』を表現して伝えたかった」と自身のスタンスを明かす。  

 プロジェクターに映された自身の写真を見ながら、「人間が作った深い穴を探してドイツ・ロンネベルグの旧ロシアのウラン採掘場にたどり着いた。深さ350メートル、広さ約3キロの穴を村の作業員たちが掘った。そのままだと小さな村が沈むので、採掘後に穴を埋める作業を作業員の息子たちが担った」と静かな語り口でその土地の物語を紹介。

 マルケリンクさんについて、山本さんは「まるでハンター。ハンターが獣の足跡を見て次の行動を予見するように、彼の写真も現代の風景の中に残留する過去の傷跡から未来の姿を語っている」とコメント。「長崎・五島列島の小さな教会が美しいのも、キリスト教迫害の歴史があるからかも」と長崎ならではのコメントも寄せる。

 原爆については、日本の従軍カメラマンだった山端庸介さんが原爆投下後の長崎で撮った女性の写真を見て衝撃を受けたというエピソードも。写真集の撮影で長崎を訪れたとき、山端さんの足跡をたどり原爆の痕跡を探したという。長崎の写真は爆心地周辺の風景写真と現代の若者のポートレートを組み合わせた作品。この作品で「日常生活はもろくて、いつか壊れてしまうということを表現したかった」と話した。

 展示写真は東日本大震災の義援金を目的に通常の10分の1の価格でチャリティー販売(2万5,000円~)も行う。売り上げは日本赤十字を通じて寄付を予定。写真集「European Eyes on Japan」(2,500円)、「Memory Traces」(1万8,750円)も販売する。

 営業時間は11時30分~20時(日曜は18時まで)。月曜・火曜定休。5月29日まで。

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