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長崎グルメ探訪2013-05-20

第2回推薦編「医師 草野洋介さん」

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長崎市内から茂木港へ向かう道を途中、田上方面へ右折すると「国立病院機構 長崎病院」の看板が見えてきます。わが取材班は前回推薦人の山下弁護士が「この方も生粋のグルメ」と太鼓判を押す「草野洋介医師」を訪ねました。

今年3月まで大学教授をされていたと伺いましたが。

長崎ウエスレヤン大学で現代社会学部 社会福祉学科の教授をしていました。専門は公衆衛生学、特に生活習慣病の予防です。



社会福祉学科とはどんなことを学ぶところでしょうか?

医療ソーシャルワーカーや社会福祉士、精神保健福祉士を養成するところです。主に相談業務を担う人材の育成ですが、長崎ウエスレヤン大学では医学系の科目全般を担当しました。他にも長崎大学医学部、長崎県立大学シーボルト校で公衆衛生学、九州大学芸術工学部でフィールドワーク演習の非常勤講師を務めてきました。また同時に県や市といった行政や大学の医学部などと協力して、公衆衛生学の知識を生かして長崎県民の健康を守る仕事を行っています。

予防医学の漠然としたイメージは何となくありますが、先生が取り組んでこられた予防医学の重要性というのは特にどういうところですか?

今までわが国の予防医学は「二次予防」、つまり早期発見、早期治療に力を入れてきましたが、これだけ高齢化が進むと、さまざまな重い病気に罹患する人が急増し、医療費もかさみ、医療資源が追いつかなくなってきました。そこで今、国が力を入れているのは、健康増進による一次予防。特に「生活習慣病の予防」です。しかし、この分野に携わっている医療従事者が不足しています。それを少しでも増やして充実していこうというのが私の思いであり役割だと思います。

そういう分野に携わる方は、そんなに少ないのですか?

医師のほとんどは臨床医学に進み、公衆衛生学の研究者である医師は長崎県には数人しかいません。ただ救いは現場で予防医学に携わる意欲的な保健師、管理栄養士、理学療法士が増えてきています。

ところで、なぜ医師を目指そうと思われたのですか?

僕の伯父や年長の従兄弟たちに多数の医師がいるのですが、特に影響を与えられたのは、伯父の存在です。伯父は長崎大学医学部の第二内科の同門会長も務めた開業医でした。また医師でありながら全国に名が通った歌人でもあるという、非常に尊敬できる人でした。ことあるごとに、私に医師としての仕事の魅力を話していただいたことがとても大きかったですね。

※註:伯父は開業医で歌人の草野源一郎さん。「やまなみ」短歌会会長。2012年4月6日没。享年87歳。

伯父の書斎にたくさんの本があって、僕は本さえ読んでいれば幸せな子どもだったので、医者になれば好きなだけ本が読めるだろうと思ったのかもしれません。

先生が今まで読んだ中で、これは一番だと思うのはどんな本ですか?

それはもう、たくさんありますが、その中でも特に小説では村上春樹さん。ノンフィクションでは、沢木耕太郎さんですね。特に村上春樹さんは今までの日本文学において、これだけ乾いた文章が書ける作家が出現したのが衝撃的でした。

乾いた文章という表現は初めて聞きました。

彼の最初の小説「風の歌を聴け」を手にした瞬間をよく覚えています。
よく背中に電気が走ると言いますが、それくらい衝撃的でしたね。
それまでも北杜夫さん、山口瞳さん、小林信彦さんとか、好きな作家で新しい本が出たら必ず買うという作家が20人くらいいましたが、特に驚きでした。

ところで、学校では何か部活動はされていたのですか?

諫早高校のときは文学部でした。一般には文芸部と呼ばれているクラブですね。文学の研究や詩作などやっていました。大学では先輩に騙されて入部した軟式テニス部(現ソフトテニス部)に朝から晩までのめり込みました(笑)。勉強はテスト直前に一夜漬けのようにして何とか凌いでいましたね。大学時代はソフトテニスと読書しかしていません。読書は一日2冊くらいを目標に読んでいました。

ではソフトテニスの大会などにも出場されたのですか?

医学部の大会は春の九州大会、夏の西日本大会、うまくいけば全日本大会ですね。そして秋の新チームによる九州山口大会があります。医学部だけの大会ですが、東日本医科学生体育大会と西日本医科学生体育大会と合わせたら、国体並みの参加者がいる規模です。3年までは監督を務めてました。今も極力大会には応援に行っています。

ところで今回ご紹介いただく店はどちらですか?

長崎の中心部のウイズビルの地下にある「プレジール・ド・ヴァン」です。ワインバーですね。

その店とのご縁は?

話せばちょっと長くなります。一番最初に酒の面白さがわかったのは大学時代です。浜口にあったそば屋「ふくめ」でした。さまざまな蔵の日本酒が飲める当時の長崎にはとても珍しい店でした。

そば屋さんで日本中の酒を堪能ですか?珍しいですね。

日本酒は作り手によって味が異なり、比較して飲むのが楽しかったのです。酒はただ酔えばいいというものではなくて、そういう違いを楽しめることがわかりました。そして1990年代前半の第一次ワインブームのころ、これまで日本酒に力を入れていた酒屋さんがワインも置き始めるようになりました。そのころ、ある酒屋さんからワイン会に誘われて、ワインを飲んだときに「ワインはもっと面白い」ということを知ったのです。

それはどういうことですか?

ワインはまずブドウの種類によって味が違う、国によって味が違う、作り手によっても味が違う。そしてヴィンテージ、つまり作った年によって味が違います。「なんと複雑で面白いのだ」と思って、いっぺんにのめり込みました。しかし長崎に本格的にワインを楽しませてくれる店が当時ほとんどありませんでした。そこに開店したのが「プレジール・ド・ヴァン」なのです。

ソムリエの間馬(あいば)さんは、パサージュ琴海の立ち上げのときに広島のホテルから料飲部門の責任者として招へいされて来られた方です。当時の長崎にいなかった素晴らしいソムリエでした。

そば屋さんで日本酒に目覚めて、それからワインに移って、本格的なワインバーが出来たので通うようになったということですね。

そうですね。酒は酔えばいいというものではなく、文化だと思います。間馬さんは文化を語れるソムリエであり、またソムリエとしての技量も確かなもので、今一番おいしいワインを、一番おいしく飲める温度で、もっともふさわしいグラスで出してくれる。あれは温度の魔術師ですね。

それだけ温度というのは大事なのですか?

大事ですね。温度管理と、そしていかに適切に供するかが重要です。

この店がどんな店なのか紹介してください?

ワインの店で値段ばかりが高い店が時々ありますが、今の世の中の経済状況であれば、そんなに高いワインをみんなが飲めるわけがありません。この店は、ボトル1本・3000円のワインから満足できるワインをきちんと揃えています。客の好みを聞いて間馬さんがセレクトしてくれます。そして、そのワインにぴったり合う料理を、若いけど凄く研究熱心な神近シェフが用意してくれます。

セレクト(選ぶ)というのが大事なんですね。

はい、そして比べることが一番の楽しみ方だと思います。

「プレジール・ド・ヴァン」のどんなところが好きですか?

ひとことで言うと気取っていないところですね。ワインは特別なものという感覚を持つ人が多いのですが、ワインは日常の食卓、日常の生活の中に入ってこなければいけない飲み物だと思います。よく年に1回、ボジョレヌーボーのときだけワインを飲むという方もいますが、間馬さんは普段の食卓から味わってほしいというお考えもお持ちです。

普段の食卓でワイン。いいですね。

もともとはビルの上の階でテーブル席がメインの少し高級な店をされていました。地下に移り、カジュアルになり「うちはワイン酒場だから」と彼は言っています。そこが共感できます。

ワインというと、どうしても構えますからね。

よく料理にワインを合わせるという話が出ますね。でもワインというのは素晴らしい飲み物なので、なぜわざわざ料理にワインを合わせなければならないのかと僕は思うのです。この店は逆にワインに料理を合わせることができる数少ない店です。だって自分が好きなワインを飲みたいじゃないですか。この料理にはこのワインが合うから飲んでくださいと言われても、それが好きな銘柄とは限らない。間馬さんはそういうことはやらないんです。

つまり好きなワインを飲むために、この料理が引き立たせてくれますよということですね。そういうことを提供するところは、あまりないのですか?

今では華花(はなはな)や、コルドーネなど素晴らしいシェフやソムリエがいるワインバーが出てきました。そういう意味では「プレジール・ド・ヴァン」が先駆者で、間馬さんがその土壌ができるきっかけを作ったのではないでしょうか。「プレジール・ド・ヴァン」はカウンターとテーブル合わせても20席もないような小さな店で、他にないから以前は週末に行ったらいつも満席でした。でも今はいろいろ選べるからいいですね。しかもタイプがそれぞれ違いますから。

「プレジール・ド・ヴァン」にはどれくらいの頻度で通われるのですか?

最近、忙しくてなかなか行けないのですが、それでも月1回程度ワインの勉強会を無理言って仲間で開かせてもらっています。ちょっと軽くワインを飲みたいときにもよく利用しています。例えば飲み会の後にちょっと軽くワインを飲んで、間馬さんと最近のワインについて少し話したいなとか、そういう風に気軽に立ち寄っています。

どんな方とよく行かれますか?

ワイン仲間です。自称「長崎ワイン騎士団」というグループを作って、みんなで長崎のワイン文化を盛り上げていこうとしています。今後その活動を活発にできればと思います。篭町の森永酒店の森永慎一郎さんが日本ソムリエ協会の北九州支部の委員をやっているのですが、彼の活動をみんなで盛り上げたいと思っています。

その騎士団というのは、普段はどこで活動されているのですか?

今は自称しているだけですが、近いうちに発会式をやりたいですね。

この店で、この料理はぜひ食べてほしいというおすすめはありますか?

できればワインの好みを相談してもらって、それに合う料理を選んでもらう方がいいと思いますね。でもあえて言えば「デュロック豚のステーキ」ですね。1600円ほどですが、脂が強いイベリコ豚よりあっさりしていて、しかも歯ごたえがいいのです。ほかにも肉なら、豚、牛、鶏、鳩などや季節によってはジビエがいろいろ揃ってます。あるいは手軽なコース料理もありますから、そのあたりは予算を考えながら楽しんでもらえると思います。

(註:ジビエ=狩猟で捕獲した野生生物の肉)

おすすめの店の使い方はありますか?

夕食に合わせてワインを飲みたいというのもいいし、二次会でワインだけ飲みたいというのもいいし、カウンターで軽く飲みたい時もあるでしょう。その日のニーズでいろんな使い方があるし、もちろんデートにも使えますね。

この店をひとことで表現するとしたら?

「おいしいワインを、予算に合わせて、いい状態で飲みたければここ」。これですね。ワインの管理は完璧です。温度はもちろんですが、劣化したワインに当たったことはないですね。

今までで一番お気に入りのワインは何ですか?

ブルゴーニュのアンリジャイエやロマネコンティーを作っているDRCのワイン、それにルーミエなどはじめこれまで多くの素晴らしいワインに遭遇してきました。一つ挙げるとすれば1905年のシャトー・マルゴーですね。

そのワインはどんなものですか?

ボルドー5大シャトーの一つですが、その中では一番女性的でエレガントなワインです。実は1905年というのは、ワインの製造年としてはあまりいい年ではないのです。ボルドーのワインでいい出来の年は、1900年、1945年、1961年、1990年、それと2005年かな?
1905年というのは決して当たり年ではないのですが、最高といってもいいワインでした。

そう言われると、何だか飲みたくなってきました。

しかし、実は僕が一番好きな産地はボルドーではなくて、ブルゴーニュです。ワイン好きの人はきっと誰でも最後はブルゴーニュワインに行きつくと思います。

私ももっとワインを勉強しないといけませんね(笑)。

最後に一つお伝えしたいことがあります。僕が大学を辞してこの病院に移った一番の理由は、今まで研究とか公的機関でやってきた予防医学を実際に実践していきたいということです。新しく開発された放射線被曝がない内臓脂肪面積計を導入してメタボリックシンドロームの予防外来を始めました。ダイエット外来と名づけました。これまで研究してきたことを実際にやらせていただいて、社会に貢献したいと思っています。例えば特定健診で腹囲を測りますよね。あの方法では内臓脂肪の量を正確に把握しているわけではないんですよ。今回導入した内臓脂肪面積計では内臓脂肪を正確に計測できますので、ぜひ利用してみてください。

いいですね。ダイエット外来。私は結構、甘いものに目がないので…。

そういう人は内臓脂肪が気になるでしょ?
測定だけでもいいので、ぜひ立ち寄ってください。

素晴らしい取り組みですね。ぜひお寄りします。

長崎大学の前身の長崎医学校を作ったポンぺ先生の言葉を紹介します。

「医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬなら他の職業を選ぶがよい」

今の長崎大学医学部の校是です。この世に生を受けて、何かひとつでも人のために役に立つことをやるんだという心構えが人生には必要だと思います。自分がこれまでに得た知識を人のためにどう活かすかということは、自分の存在意義に直接関わっていくのではないでしょうか。今日は楽しい話ができました。ありがとうございました。

草野先生。こちらこそ、ありがとうございました。

医師に囲まれる環境で育ち、医道とは何かを伯父さまから教えられたという草野洋介さん。ダイエット外来を通じて、ぜひその志を全うしていただきたいと感じました。次回グルメ探訪「プレジール・ド・ヴァン」編をお楽しみに。

■草野洋介さん
昭和36年諫早市生まれ。諫早高校、長崎大学医学部卒業
長崎大学医学部大学院博士課程(細菌学専攻)修了、医学博士取得
長崎大学医学部公衆衛生学講座助教授を経て
平成16年長崎ウエスレヤン大学現代社会学部教授
平成25年国立病院機構長崎病院医師、研究検査科長
日本生理人類学会理事
九州農村医学会理事
長崎公衆衛生懇話会会長

(文責・長崎経済新聞編集部 田中康雄)

「長崎グルメ探訪」とは
巷ではグルメ情報が氾濫しています。ここ長崎でも例外ではありません。
独りよがり
や誰のためか分からないような情報も少なくありません。

多くのグルメ情報は、その道のプロが発信します。長崎経済新聞グルメ取材班では、「プロの目線と私たちの感覚にはちょっとズレがあるのでは?」と、今までのグルメ記事の常識を疑うことから出発しました。
出た結論は「誰からの推薦なのか?」という点。
推薦人にこだわりました。

そこでプロの食通ではなく、一般の読者代表の中から推薦人になっていただき、その感覚で選んでいただいた店をご紹介します。推薦人はプロではありませんが、美味しいものにこだわりを持つ人たちです。その人たちの記事の中から「あなたの感覚に近い推薦記事」を見つける楽しみをお届けします。

人の感覚は千差万別。気に入った推薦人の行きつけの店やお気に入りの「ちょっといい店」の記事を読んでいただき、「長崎にもこんな店があるんだ」とか「前から気になっていたけど、こんな店だったんだ」と知っていただくこと。そこからあなたの「プチ贅沢」のお手伝いができれば幸いです。
毎回、読者代表の方が推薦する「お気に入りの1軒」を皆さんにご紹介します。そして次の推薦者もその方に紹介していただくというリレー形式でバトンを渡していきます。つまり推薦人リレー形式の長崎密着グルメ情報です。これから登場する店もきっと千差万別でしょう。その中から、あなたにピッタリの店がきっと見つかります。

「長崎グルメ探訪」は、あなたが探す、あなたのためのグルメ情報です。

第一、第三月曜日は推薦者特集を、同じ週の金曜日に推薦された店舗特集をそれぞれ配信する予定です。
次回5月24日(金)は店舗編「プレジール・ド・ヴァン」をお届けします。
どうぞ、お楽しみに。

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