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時津町で大学生が段ボール工場を社会科見学 地元企業の魅力知るきっかけに

参加者全員での集合写真

参加者全員での集合写真

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 長崎大学の学生を対象としたバス見学ツアーが12月26日に行われ、学生7人が日本紙器(時津町)を訪れた。主催は同大学地方創生推進本部。

原紙倉庫で説明を受ける学生

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 活気ある県内の企業を訪れることで、学生に企業説明会だけでは知ることができない新たな魅力の発見や職場の雰囲気を肌で感じてもらう場を作ることを目的に企画された同ツアー。訪問企業となった日本紙器は創業58年目の段ボール製造会社。県内で唯一貼合(てんごう)機を保有し、一貫システムで小ロットから段ボールの受注生産を行っている。

 10時前に工場に到着した一行は同社副社長の杉本和基さんから会社の沿革や段ボールの製造工程についての説明を受けた後インカムを装着し、段ボールの原料となる原紙が保管されている倉庫に入った。倉庫には厚みごとにロールされた原紙が無数に保管されており、1ロールが5300メートルにも及ぶことを聞いた学生から驚きの声が上がった。

 続いて約100メートルにも及ぶ貼合機のあるフロアに進んだ。成形後にのり付けされ、段ボールとなって出てくると成形工程で加熱された段ボールからは湯気が上がった。段ボールの段にはいくつかの種類があり、オーダーごとにさまざまな段ボールを順番に生産する工程管理システムや成形時に使われるのりがトウモロコシを原料としていることなどが説明され、出来上がったばかりで温かい段ボールを手にした学生は不思議そうに眺めた。

 工場のさらに奥に進み、インクの調色室を見学した後、印刷から製箱まで一気に行うことができるフレキソフォルダーグルアに進み、段ボールができるまでを見届けた。この工場では凸版印刷の一種で、有機溶剤の使用量が少なく環境に優しいフレキソ印刷が採用されており、印版保管室には感光樹脂でできた版が数多く並ぶ。

 工場の隅にあるリサイクル室では製造工程で出た段ボールくずが集められていた。これらを集成した古紙ブロックはリサイクル業者に買い取られ再び原紙として段ボールの原料となる。古紙ブロックの値段当てクイズに答えた学生から「10円くらいでは」という声が上がったが、実際には1万円程度と答えが発表されると「そんなに高いの」と思わず声が上がった。

 別棟にある商品開発ラインを通って最後に訪れた試作室ではサンプルカッターを使ってCADで起こした図面から試作品の切り出しの様子を見学。同社が開発を手掛ける段ボール製の遊具や試作として作られた段ボール製の教会に目を輝かせた。

 見学後には社長の杉本潔さんから今後の企業の方向性や方針を聞いた。「長崎は造船のような受注生産の企業が多い。段ボールも小ロット受注生産品でありながら、リードタイムの極端に短い特異な産業。そんな現場を支えているのはオートメーション化された生産システム」と業界の特徴を説明する杉本社長。「顧客の商品を梱包(こんぽう)するものだからこそ、梱包資材としてだけでなく商品価値を高めるための美粧ケースとしての重要な役割を担っている。ローコストかつ短納期で高品質な段ボールで顧客のビジネスを支えることができてこそ自社が成り立つ。新技術なども積極的に取り入れていきたい」と話す。学生からは具体的な取り組みなどについて質問があり、「AIを活用してより高度な品質チェックシステムを構築するなど道筋を探りたい」と答える一幕も。

 ツアーを企画した地方創生推進本部の境宗徳さんは「少人数だったからこそ細かく説明を受けることができた。日常生活で当たり前のように利用する段ボールを製造する現場に触れたことで作り手の仕事や地域に対する思いを聞くことができた。学生たちにもさまざまな気付きがあったのでは」と笑顔を見せる。

 見学を終えた学生はもう一つの見学場所であるコイルメーカーNITTOKU(大村市)を目指し、夕方同大学で解散した。

 地方創生推進本部では地元企業と学生をつなぐ交流会や企業見学などを定期的に企画しているといい、「学生が将来キャリアを考える機会をつくるためにも今後もさまざまな企業との取り組みを行っていきたい」とも。

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