HafH Nagasaki SAI(長崎市古川町)で2月17日、障がいを持つ子どもたちが制作した「オリジナルの世界地図」が設置、公開された。
この作品は施設を運営するKabuK Style(古川町)が「多様な価値観を多様なまま許容する社会インフラをつくる」をテーマに長崎県内で障がい者サポートを行う「AIUEO LAB.」と障がい者アートワークスをサポートするtsunaguアートワークスとコラボして実現したもの。多人種・障がいなどさまざまなアイデンティティーを持ちながらも子どもたちにアートの魅力を伝えるデザイナーLailaCassimさんをファシリテーターに迎え、2月14日から15日にかけて長崎県美術館(出島町)にある運河ギャラリーでワークショップが開かれ、制作した。
KabuK Style CEOの大瀬良亮さんは「HafHは世界から人がやってくる。その人がどこからやってきたのかピンで刺させるようにしたい。壁がとてもフラットなのでアーティスティックな世界地図を作りたいとも考えた。長崎だけの唯一のものにしたいと考え、Laila CassimさんやつながりがあったAIUEO LAB.の貞松徹さんに依頼した」と地図作成の経緯を話す。
障がいを持つ参加者は「アーティスト」として地図に色を付けたりモチーフを作成したりし、長崎を拠点にイラストレーター・デザイナーチームとして活動するCHEBLO(チェブロ)やLailaさんが「クリエーター」として、普段は福祉に関連する仕事を行うスタッフが「サポーター」として完成に向けてサポートし、三者で作り上げた。世界地図作成の際にはエリアごとに8つのパーツに分け、それぞれの地域のイメージをしながら無地のパーツに色を塗り重ねていった。地図のパーツ以外にも細かな切れ端などでさまざまなモチーフに見立てている。
「コミュニケーションをツールとして街、人、暮らしの個性をブランディングすることを目標としている」というAIUEO LAB.は今回が初のイベント開催となった。企画運営を行う貞松徹さんは「福祉と聞くと自分のことではない、自分の領域ではないと考える人も多い。制作を通して福祉の存在を知ってもらうことでより幅の広い対応ができるようになるのではないか」とイベントを振り返り、「ストーリーテラーがたくさんいるので、今後はさまざまなイベントを行い、長崎の魅力や人材など外部に向けて『人』をプロモーションしていければ」と意気込む。
同じく企画を行った石丸徹郎さんは「2日間の絵を描く空間が用意されていて、みんな心地いいと感じていたのではないか。参加したアーティストの楽しむ表情が見られたことや、初めて出会う大人との交流を自然と楽しんでいる様子があり、『こういう環境でも楽しむんだ』と知った人も周りにいた。人と接することは勇気がいることだが、わずか2日だったがいい空間ができたのではないか」と笑顔を見せる。
ファシリテーターとして参加したLaila Cassimさんは「参加者の個々の障がいについては特に聞かずに、参加者の目と手を見てアーティストの特性を見極めながらワークショップを進めた」とイベントを振り返る。
完成した地図は世界地図が182センチ×90センチ、日本地図が60センチ×91センチ。HafH Nagasaki SAI 3階にあるコリビングスペースでお披露目された。今後は施設利用者が出身地などを自由にピンで刺せるようにしていくという。