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軍艦島観光など手掛ける長崎の企業が講演 世界遺産伝える使命伝える

公演を行う久遠社長

公演を行う久遠社長

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 ユニバーサルワーカーズ(長崎市南山手町)の久遠龍史社長が2月19日、東京ビックサイトで開催のインバウンドマーケットEXPOで登壇し講演を行った。

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 日本能率協会(東京都港区)が主催してインバウンド・地域観光振興関係者が集う日本最大級の展示会として開催されている同イベント。新型コロナウイルスの感染拡大により、旅行客数は一時的に減少しているものの、2025年に開催される大阪・関西万博に向けて旅行客需要の回復が見込まれている。サービス業や自治体の受け入れ体制の整備と魅力ある地域づくりが求められていることから、関連業界の課題解決やインバウンド市場の拡大および地域観光振興を目的に2月16日から19日にかけて開催。情報発信や商談の場を目指す。

 セミナーでは各分野の専門家が登壇してパネルディスカッションや講演が行われた。19日10時50分からの講演に登場した久遠社長は端島(軍艦島)が世界遺産に認定されるまでの道のりについて説明。久遠社長は2003(平成15)年ごろから社長の妻が端島のアテンドに関わっていたことがきっかけで軍艦島クルーズを手掛けるユニバーサルワーカーズを2011(平成23)年に設立。当時長崎では世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の登録を目指す機運が高まっていたことから、端島をはじめとする「明治日本の産業革命遺産」登録を目指す動きは認知されておらず、県議会・市議会でも世界遺産を目指すことは否決されていた。

 しかし、世界的に見るとアジアの産業革命遺産の中心は日本であり、重要視されていることを知った久遠社長。世界遺産は保存管理の観点から管轄する行政が文化財指定していることが必要だったが、端島はまだ指定を受けていなかったことからさまざまな可能性を模索。2014(平成26)年に国の史跡として指定を受け、翌年に世界遺産を構成する資産の一つとして登録にこぎ着けた。

 民間として端島の周知に向けてできることを模索し、映画「進撃の巨人」のロケ地としてコーディネート。その後も映画「007」シリーズや「B’z」をはじめとするアーティストのPVロケ地などとして誘致に成功。島の知名度が一気に上がったことで外国人客の増加にもつながった。

 軍艦島ツアーには船酔いによって上陸体験が楽しめないことや、時化で出港できないという問題も抱えていたことから、横揺れ軽減装置のついた新船を導入。世界遺産センターの設置も予定されていなかったため、デジタルコンテンツを通じて立ち入り禁止エリアの様子や炭鉱としてエネルギー産業を支えていた当時の島の様子を楽しめる軍艦島デジタルミュージアムも開設した。

 同時に外国人観光客にとって多言語対応も必要だったことから、映像も交えてガイドすることができるシステムを導入。同システムでは初となる20言語以上に対応したシステムとした。

 久遠社長は「当時、近代化を果たした欧米列強が海を、世界を目指し支配を進めていった。当時の侍たちはまげを切り、支配を受けないために独力で学んだ結果、わずか100年という驚異的な速さで近代化を達成することができた」と話し、「今の日本を作るために戦ってきた先人たちの思いを、今の日本を次の世代に渡し、つないでいくことが私たちの使命」と講演を締めくくった。

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