「長崎ミライ教育EXPO2024~希望のキッズゲルニカ~」が4月9日~14日、長崎県美術館(長崎市出島町)で開催された。
時津町浦郷で学習特化型フリースクールを運営するNPO法人「conpeito」が主催する同イベント。代表理事の牛津理美さんが「本来のフリースクールの姿を数日だけでも体現し、伝える機会にしたい」と企画した。
延べ2000人が訪れた同イベントでは会期中、キッズゲルニカ展を開催。世界中で描かれたキッズゲルニカ作品18点を一堂に集め、作品に込められた願いや人とのつながりにスポットを当て展示した。キッズゲルニカは世界的画家・ピカソの代表作「ゲルニカ」にちなんで同作と同じ縦3.5メートル、横7.8メートルのキャンバスに子どもたちが平和へのメッセージを描く国際的な取り組み。
9日に行われた開会式ではオープニングセレモニーで書家の栗原光峯さんがゲルニカと同じサイズの半紙に「命」の一文字を揮毫(きごう)。長崎OMURA室内合奏団の齊藤享さんらが、100年ほど前にロシア革命で祖国を追われ、亡命先の広島でバイオリンの演奏で生計を立てていたセルゲイ・パルチコフさんが所有し広島原爆で被爆したバイオリンで演奏を披露した。
会場に集まった250人を前に牛津さんは「フリースクールは学ぶことが無限大でフリーというポジティブなものと体現したいと企画したイベント。変化の積み重ねは未来を変える。命をテーマにした今回のイベントで平和への一歩を歩むことができたのでは」とあいさつ。牛津さんの活動を後押ししてきたスペイン大使館のヘスス・サンツ文化科学担当参事官やキッズゲルニカ国際委員の金田卓也さんらも来賓としてあいさつを述べた。
カナダからの留学生カイトリンノレックさんによる日本舞踊や長崎居留地男声合唱団らによる合唱も披露され、会場を盛り上げた。栗原さんが揮毫した「命の書」は会場に展示し、来場者が命への思いを記して「命の寄せ書き」として一つの作品に仕上げるコーナーも設けた。
11日には、昨夏、牛津さんがプロデュースした平和ワークショップを開催した長崎市立日見中学校と長崎南山高校グローバルコースの合同発表・交流会も行われた。両校から40人ほどの生徒が集まり行われたイベントでは長崎南山高校の生徒が学校紹介や自分のカラーを英語で発表。日見中学校の生徒もふるさと学や平和活動の取り組み、今後の展望などについて発表。キッズゲルニカ展の感想をグループでシェアする交流時間も設けた。
13日・14日に行われた「まるごと学校in長崎県美術館」では各分野の専門家を講師が12講座を開き、事前応募した298人の子どもたちが参加。「垣根のない学び合いの場」として同NPOが目指すフリースクールのあり方を体現する授業を行った。
牛津さんは「『心を動かすことが教育である』という考えの下、キッズゲルニカを通して世界初の空爆を受けたスペインのゲルニカや広島をはじめ、世界中の多くの人とつながった。出会いや感動を生まれ育った長崎で共有するとともに、未来につなげていきたい」と期待を込める。