小笠原企画が運営する民泊施設が長崎市高平町にオープンして1カ月を迎えた。
今年6月に民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されたことで開いた同施設。運営する小笠原太一さんは、もともと滋賀県出身。設計の仕事に携わり、大型商業施設の設計チームに所属していたこともあるという。上海で仕事をしていた2015年に独立を考えていたが、「ちょうどその頃民泊がはやり始め、友人が営むゲストハウスを設計・プロデュースした」ことがきっかけで、自分でも手掛けてみたいと考えるようになったという。
初めは上海・東京・バンコクのいずれかで起業を考えていた小笠原さんだが、民泊をするに当たり、物価や立地面で上海か福岡を検討するように。福岡ではすでに同業者がいたことから観光客が訪れ地域創生活動をする人が少ない地域を探した。リサーチを進めるうちに坂の上に立つ住宅の空き家問題が顕在化している長崎に興味を持ち、今回の物件にたどり着いたという。
「住むのは辛いが宿泊施設としてなら」と決めた物件は、もともと築60年の空き家。駅から家までの道のりを楽しんでもらおうと、設計士の知識を生かし資材は通販などを活用しつつ、必要な部分は職人の手も借りながらセルフリノベーションした。「この高平町はもともと宿泊施設を作れる場所ではなかったが、民泊新法によって住宅街など場所の制限がなくなったことからこそできた施設」と話す。
施設は長崎県内で唯一、不在型の民泊施設として許可を取得。長崎のリアルを体験してもらいたいという思いがあるという。民泊予約アプリからの予約は主に、フランス、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、アメリカなど欧米圏を中心に、韓国からの利用もある。
部屋に設置したノートには宿泊客から「坂がすごかったけど貴重な体験をした」「日本を感じられ、長崎を感じられた」といった声が寄せられている。「快適な宿泊ではなく旅先でのリアルなことを体験してみたい、リアルな日本・長崎を体感したい」と話す人も多い。
「多くの人たちが宿泊するようになれば、清掃・食事の用意、荷物を運ぶ、売店、食事ができるカフェなどの需要が生まれ、人が来ることによる相乗効果が生まれるのではないか」と話す小笠原さん。今後は風頭公園や神社などを回るツアーを企画するなどし、地域を巻き込みながら活性化への「きっかけづくりができれば」と意気込む。